産業用ロボットの“目”が11億円を新たに調達、「知能ロボット研究所」も開設予定:産業用画像技術
3次元ロボットビジョンシステムを開発・販売する三次元メディアは、産業革新機構とスパークス・グループ、三菱UFJキャピタルを引受先とする、第三者割当増資を行い、11億円を上限とする資金調達を行う。量産化に向けた技術開発と、販売体制の強化に使用するという。
3次元ロボットビジョンシステムを開発・販売する三次元メディアは2016年5月26日、産業革新機構とスパークス・グループ、三菱UFJキャピタルを引受先とする、第三者割当増資を行い、11億円を上限とする資金調達を行うことを発表した。出資額は産業革新機構が8億円、スパークス・グループ(未来創生ファンド)が2億5000万円、三菱UFJキャピタルが5000万円を上限としており、総額は11億円にのぼる見込みだ。
三次元メディアは、立命館大学発の第1号ベンチャーであり、経済産業省サポーティングインダストリー事業の支援を受けて、2011年に世界で初めて産業用ロボットに取り付ける、3Dロボットビジョンシステム「TVS1.0」を開発した。その後、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けて、独自開発アルゴリズムとハードウェアの組合せにより、従来のセンサーでは認識が困難であった黒色、半透明、光沢部品などに対する高精度かつ高速度な画像認識を実現。さらに2014年に開発・販売した「TVS3.0シリーズ」では、輪郭計測と点群計測を併用することでより、安定した画像認識を実現している。
日本政府が推進する「ロボット新戦略」では、製造現場でのロボットの導入を2倍にするなど、大きく導入を拡大しようとしている。しかし、その一方で産業用ロボットは、基本的には事前に設定された動作しかできず用途が限られる他、人手による支援やプログラムなどの手間が大きいという課題があった。
産業用ロボットができなかった動作の1つが「ばら積みピッキング」である。部品などがさまざまな向きや姿勢で積み上がっている状況から正しくつかみ上げるには、積み上がった部品の形状を認識し、つかみ取る場所を正しく判断することと、それを正確に正しい強さでつかむなどの作業が必要になる。従来は決まった動きしかできない産業用ロボットには難しかったが、三次元メディアの3次元ロボットビジョンシステムによりロボットが「目」と「脳」の機能を持つことで自動的に加工対象物の位置・姿勢を認識できるようになり、「ばら積みピッキング」の自動化を実現することに成功したとしている。
三次元メディア 取締役 代表執行役 社長の徐剛氏は「2008年にこの事業を始めてから、2016年3月で販売台数は累計135台となった。生産ラインで実稼働している台数も30台を越えている。年率60%程度の売上高成長を続けているが、開発費も同等レベルで増えている。今回の増資によりさらに技術開発を強化していく」と述べている。
三次元メディアでは、今回の出資を活用して量産化に向けたさらなる技術開発および販売体制の強化を進めるとしている。具体的には、2016年夏までに東京に研究開発拠点を開設し、2017年には知能ロボット研究所を開設する予定。知能ロボット研究所の目的については「研究と開発を現在は同じグループで行っているが、これを分け研究部門は研究に集中できるようにする」と徐氏は述べている。
同時に海外販売サービス体制を構築し、これらの事業を推進する人材採用などにも力を入れていく。将来的には、国内外のロボットメーカーと連携した新製品の開発、システムの小型軽量化、積極的な海外への展開なども進める計画だとしている。
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