リコーがマシンビジョンに参入! 30fpsで3次元データを取得するステレオカメラ:FAニュース
リコーは、新たにマシンビジョン市場に参入する。以前からマシンビジョン用のレンズは提供していたが、マシンビジョンそのものの投入は初めて。年間300台の販売を目指すという。
リコーは2015年3月19日、新たにマシンビジョンに参入することを発表した。産業用ステレオカメラを2015年3月25日に発売し、ロボットメーカーや産業用システムインテグレーターなどに年間300台の販売を目指す。
リコーでは以前からマシンビジョン用の光学部品を提供し高いシェアを獲得してきた。しかし、あくまでも部品としての提供で、マシンビジョンそのものの展開は行っていなかった。
ただ、ドイツのインダストリー4.0など、製造現場がさらなる自動化に向けた動きを加速させる中で、“自律的に製造機械が判断する製造現場”を実現するためには、画像情報の活用が欠かせないものとなりつつある。実際に富士経済の予測ではマシンビジョン市場は拡大を続けるとしており、2012年から2020年の間にロボット向けビジョンは金額規模で3倍以上、さらに3次元ビジョンに限れば10倍に成長する見込みだという(関連記事:画像処理システム市場、3Dロボットビジョン・FAカメラが今後数年で急成長の見通し)。
一方で同社は、レンズなどで培った光学技術やデジタルカメラや事務機器などで培った画像処理技術、実装技術などを既に保有。これらを組み合わせることで高度な3次元マシンビジョンを実現できることから、参入を決定した。
参入製品となったステレオカメラ
参入製品として投入するのは産業用ステレオカメラ「RICOH SV-M-S1」だ。2つのカメラによる3次元計測で、部品の形状などを自動認識し、ロボットによるピッキングや部品の並べ替えなどに利用できる。また独自のキャリブレーション技術により高精度の測定を可能とし、1m計測時に測距精度約±1mm(実測値)を実現している。
「アクティブ方式(光切断方式や位相シフト方式)に比べれば精度は落ちるが、パッシブ方式(三角測量方式ステレオマッチング)としては±1mmの高精度を実現している。逆にアクティブ方式が不得意である“連続での素早い計測”が可能となっている点が強みだ。利用用途は広いと考えている」とリコーインダストリアルソリューションズ インダストリアルパートナー本部 産業機器モジュール事業センター 営業室 営業統括グループ スペシャリストの皆越啓祐氏は語る。
また、出荷状態でカメラキャリブレーションが完了しているため、面倒な初期調整が不要で簡単に設置可能だという。さらに、撮影と画像処理、視差演算を全てカメラ内部で行うことでデータ処理速度が向上するため、30fpsの高フレームレートで3次元データの計測を行える。測定視野は500mm×400mm、ワーキングディスタンスは800〜1200mmとし、さまざまな製造現場におけるシーンに対応可能だという。
オプションで専用の高輝度LED照明「RICOH SL-M-LE」を用意しており、組み合わせて利用することで、対象物の面データを取得可能だ。カメラ部と別筐体であるため照射角度を自由に設定でき、光沢のような低反射のワークについても3次元計測の精度を確保しやすい特徴を持つ。価格は両製品ともにオープンだが、カメラと照明を合わせて150万円程度を想定価格としている。
既にラインアップ展開も計画中
ロボットによる作業や部品の自動認識などにおいて作業時間の高速化を実現するには、カメラそのものの認識性能の他に「認識した物体がどの部品でどういう姿勢をしているか」ということを3次元CADデータなどと照らし合わせて認証する速度が重要な要因となっているが、リコーではこの領域にはまだ踏み込まない方針を示す。
「CADデータとの照合作業などの領域についても技術的には踏み込めないわけではないが、まずはカメラ部分での認識力を高め、市場を拡大していくことを優先して考えている。現状では認識できるワークサイズが限られているが、ここを拡大するようなラインアップなども計画する。また本体そのものについても小型・軽量化したものなどを検討している」と皆越氏は語っている。
3次元マシンビジョン市場には2014年4月にキヤノンが参入を発表するなど、新規参入が相次いでいる(関連記事:キヤノンがマシンビジョン市場に新規参入――産業用分野への取り組みを加速)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 画像処理とは?
製造現場における画像処理技術とは何か? その特徴や導入時のポイントなどをきちんと理解し、生産性向上に役立てていきましょう。連載第1回のテーマは「画像処理とは?」です。画像処理を製造現場で用いることのメリットを学びましょう。 - キヤノンが狙う“産業の目”、カメラや事務機で培った技術力を製造ラインへ
キヤノンは2014年4月に参入した3Dマシンビジョンシステムの動向について記者説明会を開催した。2017年までに年間300台の販売台数を目指す。 - 画像処理システム市場、3Dロボットビジョン・FAカメラが今後数年で急成長の見通し
3Dロボットビジョン市場は、2017年には2012年比7.0倍の80億円規模に。FAカメラ市場は同34.0%増の355億円になると予測されている。 - 製造現場における画像処理【前編】
製造現場における画像処理技術とは何か? その特徴や導入時のポイントなどをきちんと理解し、生産性向上に役立てていきましょう。連載第5回のテーマは「製造現場における画像処理」についてです。具体的に画像処理が製造現場で効果的に利用されている実例を紹介します。 - 富士通研、生産ラインの画像認識プログラムを自動生成する“業界初”の技術を開発
富士通研究所は、自動組み立て時に部品位置を高精度に検出する画像認識プログラムを自動生成する「業界初となる技術」(同社)を開発した。