真の「クラウドロボティクス」が見えてきた:モノづくり総合版メルマガ 編集後記
ロボットを単体で機能させるのではなく、クラウド上に用意された計算能力や人工知能を連携させて機能させるのが「クラウドロボティクス」です。概念自体は以前からありますが、ようやく「真のクラウドロボティクス」が見えてきました。
ロボットを単体で動かすのではなくクラウドに接続し、クラウド上にある膨大な処理能力や人工知能を連携させるのが「クラウドロボティクス」です。
この概念自体は以前から存在しており、PepperやRoBoHoNといったロボットはクラウドの利用を前提に設計され、クラウドなしにはその能力を十分に発揮することができません。その意味では既に実現した概念なのですが、これまでは専用クラウド以外の選択肢がほぼなく、クラウドという言葉が持つ柔軟性がロボットには反映されないケースがほとんどでした。
ですが、その状況に変化が見えます。
米IBMとソフトバンクロボティクスは共同で、IBM Watsonのコグニティブ(認知)能力をPepperを介して利用できる状態を既に作り出しています。また、マイクロソフトもPepperとPC、クラウド「Azure」を組み合わせた店舗ソリューションを準備中です。WatsonやAzureといった“巨大”なクラウドだけではなく、ソフトブレーンも同社CRM/SFAをベースとしたクラウドの端末としてPepperを利用する受付システム「eレセプションマネージャー」を既に販売しています。
そして、この流れはPepperだけに見られるものではなく、富士ソフト「Palmi」もクラウド名刺管理サービス「Sansan」への対応を果たしており、利用するクラウドによってさまざまな方向へ能力を拡張可能とするのが、現在のサービスロボットのトレンドといえます。
2016年5月24日に行われたマイクロソフトのイベント「de:code 2016」でも、同社の持つAI技術をAPIとして提供、さまざまなロボットから利用できる事例が紹介されていました。会場では女子高生AI「りんな」とPalmiの会話や、Office 365のAPIを利用したPalmiによるスケジュール管理などの事例が展示されていました。くしくも同時期に開催されたIBMのイベント「Watson Summit」でも同様の光景が見られました。
では、なぜ最近になって「柔軟性を備えたクラウドロボティクス」が増加したのでしょうか。それには2つの理由があるように思います。
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