Pepperにライバル、クラウド連携のヒト型サービスロボ「EMIEW3」
日立製作所が接客案内などを行うヒト型サービスロボット「EMIEW3」を2018年に市場投入する。クラウド接続を前提に、システムとして目的を果たす思想で開発されており、監視カメラや商品DBとの連携でサービスを提供する。
日立製作所は2016年4月8日、店舗や公共施設での接客・案内業務などを行うヒト型サービスロボット「EMIEW3」を開発したと発表した。
ロボット単体ではなく、遠隔にて各種処理や制御などを行う「ロボットIT基盤」と組み合わせての運用が想定されており、より高度なサービスの提供を可能にする。EMIEW3とロボットIT基盤、オペレーターで構成されるチームを構成しての実証実験を2016年度中に開始、2018年の実サービス提供を目指す。
同社では2005年の「EMIEW」、2007年の「EMIEW2」と人間と共生できるロボットの開発を進めており、EMIEW2では自律走行機能や物体認証、人の声の聞き分け、ネットワークカメラを自身の目として利用する探知機能などが開発、検証されてきた。
EMIEW3では身長90センチ/15キロのロボット本体に、最高時速6キロの移動速度、15ミリの段差乗り上げ機能を搭載といった特徴を前モデルより継承、新たに転倒からの起き上がり機能を備えることで利用範囲の拡大を果たした。
加えて、機体制御やセンシングなどリアルタイム性の要求される処理についてはロボット内部で、高い処理能力と判断が求められる一部の知能系処理(音声、画像、言語処理など)を外部(ロボットIT基盤)で行う「リモートブレイン構成」を採用することで、より高度なサービスの提供を可能としている。
外部システムとの連携が前提となるため、「監視カメラ情報を元に迷っている人を発見して、案内する」「商品DBを参照しながら売り場案内を行う」といったサービスが可能となるほか、複数ロボットのデータ共有機能も有しており、ロボットが情報を引き継ぎながら案内するといった利用も可能だ。なお、基本的にはロボット単体では機能せず、トラブルなどでネットワークから切り離された場合はフェイルセーフが働く。
店頭接客や案内などの業務をロボットにて行うという意味ではPepperが先行しているが、同社では「システムと一体のサービス提供」「広範囲の移動」「小型軽量な本体」などを特徴として訴求していく考え。
2018年には実際にロボット(サービス)を提供する予定としているが、提供形態や価格は未定。実証実験を通じてこれらのイメージを固めていくとしているが、ロボットIT基盤と組み合わせての利用が基本となるため、「ロボットを中心としたソリューションパッケージ」としての提供が基本になると想定される。
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