インダストリー4.0で具体化した日独連携、競合を越えた「つながる」の価値(後編):ハノーバーメッセ2016(3/3 ページ)
ハノーバーメッセ2016において第10回となる日独経済フォーラムが開催された。テーマは「実践の場におけるインダストリー4.0」とされ、会期中に発表された日独政府の連携なども含めて、日独の協力体制や土台作りに注目が集まった。後編では、日独両国が特に協調が必要だと語った「中小企業の支援」について紹介する。
中小製造業のIoT活用に対する日本の取り組み
日本でもドイツと同様に中小製造業のIoT活用や、「つながる」取り組みへの参加は大きな課題である。前編では、日本におけるスマートファクトリー関連の連携の場として、ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)や、日本機械学会での活動が母体となったIVIなどを紹介した。
RRIで、IoTによる製造業の変革について取り組んでいるのは「IoTによる製造ビジネス変革WG」だが、同WG内にもIVI内にも、中小企業のIoT活用推進を目指したグループを設置。どういう形が中小製造業にとって効果的なのか、という点を模索している。
さらに2016年4月27日に発表された産業構造審議会の中間整理である「新産業構造ビジョン」では、中小企業に対するITおよびIoT導入の支援を行う方針が盛り込まれている。この中では当面の対応案として、主に以下の点を挙げている。
- 中小企業等経営強化法案
- 今後2年間で専門家によって1万社以上の中小企業のIT導入を支援。特に製造業についてはIT、カイゼン活動、ロボット導入の専門家で構成される「スマートものづくり応援隊」に相談できる拠点を整備
- 小型汎用ロボットの初期導入コストを2割以上削減。ロボットの導入を支援する人材(システムインテグレーター)の拡大を支援
- 人手不足の中で中小企業の生産性向上を図るため、サービスロボットやIoTと連動した設備投資など省力化・自動化のための投資促進
- 中堅・中小企業の標準化の支援に向け、「標準化活用支援パートナーシップ機関」(地銀等)を47都道府県に拡大
- ディープラーニングでの技術開発と現場導入をさまざまな分野で一体的に推進、イノベ−ション・社会実装を加速
- 福島イノベーションコースト構想にもとづくロボットテストフィールドなどの整備
この中で特に取り組みとして新しいのが「スマートものづくり応援隊」である。中小製造業のIT化の支援を行うとともに、製造現場においてIoTをどう活用すべきかという支援を行う。ドイツの「インダストリー4.0コンピテンスセンター」と同様に、これらを実践しテストできる施設を日本国内に用意する方針だ。経済産業省 製造産業局参事官室 スマートものづくり担当課長 西垣淳子氏は「まずは日本国内に5カ所設置することを目指す」と述べている。
1〜2年前までは“大企業のもの”と思われてきたインダストリー4.0や製造業のIoT革新の動きだが、これらのように急速に中小製造業にも門戸が開かれつつある。実際に中小製造業に対する政府からの支援体制は、手厚いものになりつつある。日独連携の中でも相互に中小製造業を派遣し合うことなども検討されている。数年前とは異なり、中小製造業にこそインダストリー4.0でのチャンスが訪れているのかもしれない。
※【訂正】記事の掲載当初、経済産業省 製造産業局参事官室 スマートものづくり担当課長 「西垣淳子氏」の名前を「西垣敦子氏」と誤って掲載していました。お詫びして訂正いたします。上記記事は訂正済みです。
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