運転に慣れている人にこそ、意外と役立つ運転支援システム:いまさら聞けない 電装部品入門(25)(4/4 ページ)
2009年まで、日本では衝突する前に完全に停止する自動ブレーキが法規制で認められていなかったが、今や部分的ながら自動運転システムも利用されるようになった。後編では、ステレオカメラをはじめとするさまざまなセンサーのおかげで実現した、自動ブレーキ以外の機能について紹介する。
カメラの小型化と高性能化がもたらす恩恵
オートハイビームシステムは、ハイビームでの走行が最も安全な視界を確保できるという前提に立ち、車両に設置されているカメラで前走車や対向車を認識した場合のみロービームに自動で切り替えます。詳細は連載23回でも触れています(関連記事:ヘッドランプ進化の歴史、シールド式からハロゲン、HID、LED、そしてレーザーへ)。
レクサスの一部車種や「クラウン」などで採用されたシステムに至っては、ハイビームからロービームに切り替えるのではなく、前走車や対向車の周囲のみハイビームの光線を照射させないよう配光を制御する特殊な技術が施されています。
ここまで多くの機能を紹介してきましたが、他にも紹介できていないさまざまな運転支援システムがあります。左に方向指示器を出すと車載情報機器の画面が車両左側後方の映像に切り替わる機能や、車両前端に配置したカメラによって、人の目では確認できない見通しの悪い交差点の左右方向を映像で見ることができる機能もあります。
携帯電話の普及が大きなキッカケなのではないかと個人的には思っていますが、カメラの小型化と高性能化というのは自動車業界にとっても大きな進化です。
サイドミラーを無くしてカメラとディスプレイに置き換えるといったシステムもそろそろ実現しそうな時代ですので、まだまだ運転支援システムの進化は止まりそうにありません。
ひとつ懸念しているのは、自動車側から提供される情報量が多すぎて、受け取った情報を処理する人間が混乱したり処理しきれずに逆に危険な目に合ったりする状況になりえるという点です。
運転中にさまざまな情報が提供されるのは悪いことではありませんが、これらはあくまでも運転支援システムであり、ドライバーが全て受け取って処理しなければいけない情報ではありません。
危険なシチュエーションでドライバーが危険を回避する行動を補うツールとして活用することが最も大切ですので、情報に溺れずに基本に忠実な運転を心掛けましょう。
筆者プロフィール
カーライフプロデューサー テル
1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。
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