先行き不透明な中国自動車市場、エコカーとクロスオーバーで乗り越えられるか:北京モーターショー2016レポート(4/4 ページ)
中国経済の成長鈍化により同国の自動車市場は先行き不透明な状態になっている。そんな状況下で開催された「北京モーターショー2016」では、厳しい環境規制に対応するエコカーや、唯一大きな成長を見せているクロスオーバー車の出展が相次いだ。桃田健史氏による同ショーのレポートする。
中国地場メーカーは新型EVと自動運転車でアピール
これらの他、会場内で出展数が多かったのが、前述のNEVに対応するEVだ。それも、第一汽車、東風汽車などの地場大手よりも、地場の中堅や新興メーカーの出展が目立った。
少し昔を思い起こせば、2010年ごろにも政府の施策「十城千両」に対応するため、北京モーターショーや上海モーターショーに中国地場製の各種EVが登場した。だが、その多くがガソリン車からのコンバージョンといった“粗末な造り”だった。
それに対して今回の北京モーターショーでは、フード内部の電装品のレイアウトを見ただけでも、欧米や日本製のEVと同様と出来栄えに仕上がっている。中国地場メーカーは伝統的に、ドイツ企業をあがめる傾向が強いため、Robert Bosch(ボッシュ)やContinental(コンチネンタル)などからモーター、インバータ、リチウムイオン二次電池を調達しているようだ。インテリアもシフターやダッシュボードで、EV専用化した先進的なデザインだ。
また、燃料電池車については、乗用車向けでは北汽集団が「燃料電池搭載のレンジエクステンダー」の技術展示を行った。
そして、世界各地で本格的な公道実証試験が進む自動運転車でも、中国製が続々と登場した。長安汽車の場合、今回の北京モーターショーに合わせて、北京を終点とした高速道路2000km走破を達成。ベンチャー「LeSEE」は、2016年1月の「CES 2016」で世界発表された「Faraday Future(ファラデーフューチャー)」からEV技術の提供を受ける自動運転車を公開した。
ただし、中国で開発が進められてきた自動運転技術はもともと、中国軍による軍需を想定しており、高精度マップの作成についても“軍需の壁”が立ちはだかっている。検索サイトと地図情報サービス大手の百度(バイドゥ)はBMWと人工知能の開発で連携し、自動運転での応用研究を進めているが、そうした「自動運転の本質」について、今回のような一般消費者向けモーターショーでは研究の進捗状況が公開されることはない。
筆者プロフィール
桃田 健史(ももた けんじ)
自動車産業ジャーナリスト。1962年東京生まれ。欧米先進国、新興国など世界各地で取材活動を行う。日経BP社、ダイヤモンド社などで自動車産業、自動車技術についての連載記事、自動車関連媒体で各種連載記事を執筆。またインディカーなどのレース参戦経験を基に日本テレビなどで自動車レース番組の解説も行う。近刊は「IoTで激変するクルマの未来」。
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