SCMプロを証明する“免許証”「CPIM」とは:生産管理の世界共通言語「APICS」とは(4)(5/5 ページ)
グローバルサプライチェーンを運営していく上で“世界共通言語”とも見られている「APICS」を専門家が解説していく本連載。3回目は、SCMに関するグローバルスタンダードとなるAPICS資格制度の「CPIM」について解説する。
CPIM取得のための準備
最後に、学習方法など取得にあたっての具体的な点にいくつか触れておく。
CPIM取得のポイントは、まずは取得の目的を明確にすること、次に、目的と自分に合った学習方法を選択することである。CPIMは、全てを受験するには合計5科目を全て受験しなければならずボリュームが大きい。また日本で受験する場合には、1科目あたりの受験料が4万3000円となっている。学習の基礎教材であるテキスト代(科目あたり1万4400円)を加えると、全科目を1度で合格したとしても、合計30万円近くかかる(2016年1月時点、今後変動の可能性あり)ことになる。また、学習教材や試験まで、全て英語である。
学習時間・費用の捻出、英語での学習というハードルを確実に越えてみせる、という強い目的意識がない限り、忙しい社会人にとって5科目制覇までたどり着くのは非常に困難である。そこで、まずはモジュールのBSCMを確実に取得することをお勧めしたい。BSCMをきちんと理解したうえで取得すれば、APICSの考え方の大枠とCPIMの概要を把握することはできるので、その後状況や業務との関連度に応じて、残りのモジュールの学習計画を立てるのもよい。
モジュールの受験の順番は定められてはいないが、BSCMで始めてSMRに終わるのが、CPIMの構成に沿っているので、もっとも自然で、学習効果も高いと思う。なお、CPIM取得のためには、10年以内に全てのモジュールに合格する必要がある。
学習方法
学習方法には、APICSが直接・間接に提供するオンラインコース(米国Fox Valley Technical Collegeとの提携講座など英語コースのみ)、APICSのチャネルパートナー(グローバル展開における協働団体で、日本では日本生産性本部と日本ビジネスクリエイトがパートナーとなっている)が開催するセミナーへの参加、そして独学、の3種類がある。多くの方は独学で取得しているのが現在の実情である。オンラインコースは、語学の問題があるので、日本で受験を考えている多くのひとは、セミナーと独学の組み合わせで学習することになるだろう。
業務を通じてある程度の関連知識・経験を習得しているモジュールであれば、テキストを読み込み、知識を整理し、別途販売されている練習問題で定着度や理解度を測る独学で対処できる。逆に、需要予測業務が専門で、供給側の仕組みを担当したことが全くない人は、分からないモジュール範囲についてはセミナーに参加し、専門家による説明を日本語で正しく理解した後、独学で知識の定着を測るとよい。
ただし残念なことに、日本での資格取得者数がまだまだ少ない(2014年のCPIM認定は、全国で8人)。そのため、セミナーの開催頻度は年に1〜2回程度と非常に限られている。企業内でトレーニングを実施している例もあるようなので、個人でなく職場を巻き込んでスキルアップを考えている方は、日本生産性本部に問い合わせてみるとよいだろう。
現状日本では、CPIMはもとよりAPICSそのものの知名度もまだまだ低いが、日本企業が社内で培ってきたノウハウや、熟練社員が口承伝承的に伝えてきた内容が、突き詰めればグローバル標準と整合していることを世界にアピールすることは、グローバル化するビジネスを支えるうえで非常に重要になる。そのアピールを行うにあたっては共通の“ものさし”が必要になる。共通のサプライチェーン言語とグローバル標準を理解している証として、CPIMの価値は今後ますます高まっていくと考えられる。
筆者プロフィル
安達紘子(あだち・ひろこ)
コヴィディエン ジャパン SCM本部 Warehouse Management & Customer Service シニアマネージャー。
CPIM、APICS認定インストラクター、東工大大学院キャリアアップMOTストラテジックSCM講座修了。慶応義塾大学卒業後、日系国際輸送会社に勤務の後、外資系ファッションブランドを経て、現職は米国に本社機能をもつ最大手医療機器メーカーにおいて倉庫管理とカスタマーサービスを担当。
講演セミナー:「APICS紹介セミナー」(日本生産性本部2014年〜)など。
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