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SCMプロを証明する“免許証”「CPIM」とは生産管理の世界共通言語「APICS」とは(4)(4/5 ページ)

グローバルサプライチェーンを運営していく上で“世界共通言語”とも見られている「APICS」を専門家が解説していく本連載。3回目は、SCMに関するグローバルスタンダードとなるAPICS資格制度の「CPIM」について解説する。

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CPIM資格取得のすすめ

 CPIMは、SCM全体の仕組みと生産計画と在庫管理における実務とを、包括的に業界のグローバル標準にのっとって理解していることを認定する資格である。そのため、以下のような方々に取得をお勧めしたい。

  • 生産計画や在庫管理分野の業務に携わっているが、知識内容を整理して、客観的に知識レベルを把握したいと考えている人
  • 例えば、国際輸送や購買、資材調達といったSCMの特定分野で経験を積んできたが、守備範囲を拡張してビジネのSCM全体を把握できるようになることで、全体最適の提案能力を高めて、ステップアップをしたいと考えている人
  • コンサルティングファームで、SCM関連のプロジェクト、特に生産現場の改善やシステムの導入・拡張に携わっていて、具体的なプロセスを把握したいと考えている人

 CSCPといずれかで迷っている人は、身に付けた知識を現場やその改善に反映させたいのか、あるいはSCM全体やビジネスに反映させたいのかの軸で検討するとよいだろう。前者であればCPIMを薦めるが、その場合でも、CPIMは単に現場運営のためのノウハウを詰め込んだものではなく、経営と現場、さらには市場・環境と現場がどうつながっているのかを理解していることを示す資格であることを強調したい。

取得に伴うメリット

 CPIMの取得は、取得者本人のみならず、企業にとってもさまざまなメリットがある。

 まず取得者本人にとっては、知識の整理・取得により、業務範囲の転換・拡大や昇進など、SCMプロフェッショナルとして機会を増やすことができる。筆者が2015年まで勤務していた米国では、APICS発祥の地だけにCPIMの知名度とそれに対する評価は非常に高いものがあった。資格取得者は、ほぼ必ず名刺に資格名を記載していたし、リクルーティングにおいても「CPIM/CSCP required」という文言がよく見られた。

 実際に周囲で資格取得を目指している人たちを見ても、資格取得とより高い評価、よい良い職場・地位が強く結びついているという認識があればこそ、非常にモチベーション高く勉強をしている人が多かった。「CPIM資格保有者の14%は昇給し、65%は雇用機会が拡大する」というAPICSによる調査結果からも、米国では全国的にこうした状況であると考えられる。

 一方日本では、まだそこまでの認知度や効果はないがかもしれない。しかし、日本生産性本部が主催するAPICS紹介セミナー参加者のなかでも外資系企業勤務者からは「本国から取得を指示された」「他国の担当者に資格保有者が増えており、日本も合わせる必要が出てきた」という声を聞くことも増えてきた。じわりじわりと浸透してきている印象がある。この傾向が今後さらに進み、TOEICのように採用や昇進の際に優位に働く要件となるかもしれない。

 企業にとっても、社内にAPICS有資格者がいることや、取得を推進する姿勢を持つことは、ビジネスの機会を増やすうえで優位に働く。特に日本国内を越えてグローバルで業務をしようとする企業にとって、APICSによるグローバル標準を社内で備えていることを、有資格者の存在をもってアピールすることは、ビジネス獲得の強力なツールとなる。実際、国際会議でブースを出した企業が、相手先の外国企業から取引の条件としてAPICS有資格者が担当するように言われたという話も聞いたことがある。

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