クアルコムの電気自動車向けワイヤレス給電技術、DD方式コイルで差異化:オートモーティブワールド2016
クアルコムは、「オートモーティブワールド2016」で、同社の電気自動車向けワイヤレス給電技術「Halo」を紹介。米国の規格策定活動などで提案しているDD方式の受電コイルのメリットなどについて説明した。
Qualcomm Technologies(以下、クアルコム)は、「オートモーティブワールド2016」(2016年1月13〜15日、東京ビッグサイト)内の「第7回EV・HEV駆動システム技術展」において、同社の電気自動車向けワイヤレス給電技術「Qualcomm Halo(以下、Halo)」を紹介した。
Haloは電磁誘導方式を用いたワイヤレス給電技術である。展示ブースでは、Haloの受電コイルを搭載した日産自動車の電気自動車「リーフ」と、路面に設置した送電コイルを使ってワイヤレス給電を行うデモンストレーションを披露した。送電コイルの出力は7.4kW、送電効率は最大91%、平均87%以上を達成。受電コイルと送電コイルと位置ずれ許容距離については水平(XY)方向で±100mm、高さ(Z)方向で85±20mmを確保している。
クアルコムの説明員によれば、米国、欧州、日本の各地域で電気自動車向けワイヤレス給電技術に関する標準規格の策定活動が進んでいるという。米国ではSAE(米国自動車技術会)が主導しているが、そこでクアルコムが自動車に搭載する側の受電コイルの方式として提案しているのがHaloの独自技術であるDD方式だ。
SAEが策定している標準規格では、ワイヤレス給電の受電コイルとして一般的な丸型コイルが検討されている。丸型コイルのサイズは、受電コイルの出力電力が3.3kWの場合で、当初は250mm角が想定されていたが「現在は280〜290mm角と徐々に大きくなっている」(同社の説明員)。これに対して、8の字、もしくは“D”を2つ並べたかのような形状のDD方式コイルであればサイズは250×180mmで済む。また、丸型コイルはコイル全面に磁石を敷き詰めなければならないが、DD方式は2つの“D”の内側に磁石を配置すればよいので磁石の使用量が少ない。このため同じ出力電力であれば、DD方式のコイルの重量は丸型コイルよりも30%軽くて済む。
展示では、出力電力が3.3kWで、受電コイルと送電コイルの高さ方向の位置ずれ許容距離が100mmクラスの丸型コイルとDD方式コイルを比較。併せて、出力電力3.3kW/高さ方向の位置ずれ許容距離160〜200mmクラス、出力電力7〜8kW/高さ方向の位置ずれ許容距離160〜200mmクラスのDD方式コイルも見せた。
一般的な丸型コイルと「Halo」のDD方式受電コイルの比較。右上が出力電力3.3kW/高さ方向の位置ずれ許容距離100mmクラスの丸型コイル、右下が同じ仕様のDD方式コイル。左上が、出力電力3.3kW/高さ方向の位置ずれ許容距離160〜200mmクラス、左下が出力電力7〜8kW/高さ方向の位置ずれ許容距離160〜200mmクラスのDD方式コイル(クリックで拡大)
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