Faraday Futureの電気自動車コンセプトはなぜ1人乗りなのか:2016 CES(2/2 ページ)
米国ベンチャー企業のFaraday Futureは「2016 International CES」の開幕に合わせて、同社が今後開発していく電気自動車の基本コンセプトを示す「FFZERO1」を公開した。1人乗りのレースカーのような車両だが、そこには数多くのコンセプト詰め込まれている。
車両プラットフォーム「VPA」の可能性
コンセプトカーのFFZERO1そのものはキワモノに近い車両だが、その中に込められたさまざまな技術要素は、今後のFaraday Futureの方向性を示すものになっている。
FFZERO1、そしてFaraday Futureが今後開発する車両にとって最も重要な役割を果たすのが車両プラットフォーム「VPA(Variable Platform Architecture)」だ。VPAは、車両の全長、ホイールベース、最低地上高、電池パックの搭載数(=電池容量)、モーターの搭載数などを柔軟に変更できることが特徴になっている。セダンやクーペ、SUVといった車両タイプも自由に変更できるとしている。
中でも電池パックについては「ストリング(strings)」と呼ぶ電池モジュールの単位で増減させられるとしている。ストリングを増やすと、その分だけ車両の全長とホイールベースが伸びることになる。
VPAと同様のコンセプトは、国内ベンチャーであるシムドライブやGLMなども提唱している。しかし実際に事業化につなげるのは容易ではない。Faraday Futureは事業化に向けてどのような車両を開発することになるのか注目だ。
パーソナルモビリティを志向
Faraday Futureは、同じ米国の電気自動車ベンチャーであることから、テスラと比較されることが多い。しかし、今回発表したFFZERO1は、テスラの「モデルS」や今後開発するであろう「モデル3」とは明確に異なる点がある。
テスラの車両は、最初に開発した「ロードスター」を含めて従来の乗用車と同じ複数人で乗車するものになっている。これに対してFFZERO1は1人乗りだ。NASAの「zero gravity」デザインに着想を得た運転席や、ドライバーが持つスマートフォンをそのまま組み込めるステアリングなど、パーソナルモビリティとしての快適性や機能性を重視していることが見て取れる。
Faraday Futureは今後開発する電気自動車に自動運転システムを搭載する方針も示している。また、製造した車両を販売する従来の自動車のビジネスモデルではなく、Faraday Futureの自動運転パーソナルモビリティを“走るスマートフォン”のようなサービス提供プラットフォームにして、そのサービス料金で稼いでいくことを志向しているという報道もある。
FFZERO1について「これは1つのコンセプトを示すクルマ(a concept car)ではない。複数のコンセプトを詰め込んだcar of conceptsだ」と説明するFaraday Future。実際に量産販売するクルマはどのようなものになるのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- テスラは「モデルS」をどのように開発したのか、EV開発の核心に迫る
米国市場で好調に販売台数を伸ばし続けている、Tesla Motors(テスラ)のプレミアムEVセダン「モデルS」。元三菱自動車で、EV「i-MiEV」の開発を担当した和田憲一郎氏が、テスラのディレクターを務めるカート・ケルティ氏に緊急インタビューを敢行。モデルSに代表されるテスラのEV開発の核心に迫った。 - 試作4号EV「SIM-HAL」はシムドライブの集大成、今後は実用化フェーズへ
電気自動車(EV)ベンチャーのSIM-Drive(シムドライブ)は、試作EVの4号車「SIM-HAL(シム・ハル)」を発表。これまでの先行開発車での技術成果や経験を生かし、走行距離をはじめとするEVの課題をクリアした。今後は「EV実用化」に向けた開発に本格的に乗り出す。 - 幻のスポーツカー「トミーカイラZZ」はなぜEVとして復活を遂げたのか
京都発の電気自動車(EV)ベンチャー・グリーンロードモータースが開発したEVスポーツカー「トミーカイラZZ」が、グランフロント大阪で披露されている。206台しか販売されなかった幻のスポーツカーであるトミーカイラZZは、なぜ同社のEVとして復活したのか。全ては1つの出会いから始まった。 - 電気オート三輪がカーブで転倒しない仕組み、「加速度センサーは使っていない」
日本エレクトライクが開発したオート三輪ベースの電気自動車(EV)「エレクトライク」が国土交通省の型式認定を取得した。オート三輪の最大の課題である、カーブを曲がる際の不安定さを、後2輪にそれぞれ直結したモーターの個別制御により解決したことを最大の特徴とする。 - 水上走行もできる4人乗り超小型EVをベンチャーが開発、水害の多いタイで販売
電気自動車(EV)ベンチャーのFOMMは、前輪2輪にインホイールモーターを搭載する4人乗りの超小型EV「FOMMコンセプトOne」を開発した。2014年3月にタイで開催される「第35回バンコク国際モーターショー」に出展し、2015年10月からタイ市場での販売を目指す。水害の多いタイ市場向けにジェット水流発生装置で水面を移動できる機能も搭載している。