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テスラは「モデルS」をどのように開発したのか、EV開発の核心に迫る和田憲一郎の電動化新時代!(4)(1/3 ページ)

米国市場で好調に販売台数を伸ばし続けている、Tesla Motors(テスラ)のプレミアムEVセダン「モデルS」。元三菱自動車で、EV「i-MiEV」の開発を担当した和田憲一郎氏が、テスラのディレクターを務めるカート・ケルティ氏に緊急インタビューを敢行。モデルSに代表されるテスラのEV開発の核心に迫った。

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テスラのカート・ケルティ氏(左)と筆者の和田氏
テスラのカート・ケルティ氏(左)と筆者の和田憲一郎氏

 電気自動車(EV)ベンチャーとして知られるTesla Motorsが、EVスポーツカー「Roadster(ロードスター)」に続く第2弾として市場投入したのが、プレミアムEVセダン「Model S(モデルS)」である。2012年6月に米国市場で納車を開始し、そのスタイリングと革新的な技術により多くの支持を得ている。

 実際に、2013年第1四半期(1〜3月期)の販売台数は4750台と、EVのみならず、Daimlerの「Mercedes-Benz Sクラス」、BMWの「7シリーズ」、Audiの「A8」といったプレミアムカーと比べても圧倒的な存在感を示した。日本でも、テスラの日本法人が販売拠点を構える東京・青山と大阪で試乗会を開催するとともに、既に注文受付も開始している。納車は2013年内に開始の見込みだ。さて今回は、モデルSの電池システムなどの開発責任者で、テスラのディレクターを務めるKurt Kelty(カート・ケルティ)氏が来日したので、どのようにしてモデルSが開発されたのか、緊急インタビューを行った。

2チームで進めた「モデルS」の開発

和田憲一郎(以下、和田)氏 ロードスターに比べ、モデルSでは、プロジェクトマネジメントが何か変わったのか。新プラットフォームの開発や多彩な新技術の導入、衝突要件のクリアなど、全てを同時並行で進める必要があったので、プロジェクトマネジメントが大変だったと思うが。

カート・ケルティ(以下、ケルティ)氏 ロードスターの場合、パワートレイン(以下、P/T)の開発チームだけだったが、今回のモデルSではそれに加えてVehicle(ビークル)チームも結成したことが大きな変化と言えるだろう。ロードスターの開発では、シャシーをLotus(ロータス)に発注していたのだが、モデルSは、ボディや内装部品なども自社開発する必要があった。そこで、自動車業界からテスラに移ってきたメンバーを加えて、開発チームを2つに分けたのだ。モデルSの開発全体は、最高技術責任者(CTO)がコントロールしている。なお、17インチディスプレイを搭載する車載情報機器に代表されるような車載エレクトロニクスシステムは、一般的にはビークルチームが開発を担当するが、今回はEVシステムと密接に関係することもあり、P/Tチームに参加して開発を進めた。2つの開発チームがあるといっても、テスラの組織はかなりフレキシブルで、流動性がある。

「モデルS」の外観
「モデルS」の外観(クリックで拡大) 出典:Tesla Motors
「モデルS」のインテリア
「モデルS」のインテリア。ダッシュボードの中央に、17インチディスプレイを搭載する車載情報機器が組み込まれている(クリックで拡大) 出典:Tesla Motors

和田氏 プラットフォームを新たに開発したが、どのようなところに気を配ったのか。

ケルティ氏 新しいプラットフォームを開発する上で、最も苦心したのが電池搭載レイアウトである。日本においてもそうだが、駐車場の車止めや縁石に車両が乗り上げてしまい、車両の床面に車止めや縁石がぶつかることがある。当初は、車両下端を電池パックの壁面としていたが、車止めや縁石にぶつかる可能性を考慮して電池を保護する必要があると判断し、最終的に電池パック下側にプロテクターを追加装着した。

 モデルSの電池容量は、60kWhと85kWhの2種類ある。電池容量の少ない60kWhの場合、電池パックの中で電池セルを片側に寄せるのではなく、バランスが崩れないように全体的に均一に配置できるようにレイアウトした。また電池セルを十分に冷却できるように、電池セル間で十分なスペースを取るよう配慮している。

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