会社は小さいが、夢はでかい! 倒産の危機から回復、そして宇宙へ:SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2015(4/4 ページ)
小さな企業ながら航空機部品製造や宇宙ベンチャーとのコラボレーションなどを行う由紀精密。倒産の危機からのV字回復や、新たな挑戦を続けるわけを語った。
ネットにつながる卓上切削マシンを作る
腕時計の部品のような細かいものでも、それを作る工作機械は大きなものだ。小さいものを作る機械は小さくてもよいのではないかと思い付いたが、工作機械メーカーに尋ねると「小さいと精度が出ない」とのことだった。さらに探してみたが、世界中のどこにも卓上で精度の高いCNC工作機械は見当たらなかった。そこで碌々産業とのコラボレーションで作ったのが、CNC微細加工機「VISAI」だ(関連記事:まさに“卓上加工”、碌々産業と由紀精密が共同開発したCNC工作機「VISAI」が始動)。
幅は800mmで家庭用電源で動き、1ミクロンの加工精度を持つ。こだわったのが、機械自体の美しさだ。「時計のような芸術性の高いものを作る時には、機械も美しい方がよい」(大坪氏)というコンセプトで作られた。そういった感性を持つ人に大事に使ってもらい、価値の高い製品を生み出してもらえればという。
VISAIの精度、外観に加えたもう1つの大きな特徴が、ネットワーク経由で動かせることだ。VISAIはPCやスマートフォン、iPadなどにより遠隔でコントロールできる。この機能は3Dプリンタでは存在するものの、切削機械ではあまりなかった。
ネットで全て操作できるため、遠く離れた海外でも3次元図面さえあれば材料をセットするだけで製品が作れる。切削の様子はWebカメラで映像と音でも確認できる。遠隔での加工を実現するのに必須なのが「精度の良さ」だ。出来上がった後に「寸法が違うから追加工」となると大変だ。VISAIは遠隔加工が可能にした点で、製造業の仕組みを変えるのではないかと大坪氏は述べた。
由紀精密はどんな会社?
由紀精密の社員はたった27人しかいない。それだけでなぜこれほどの多様なプロジェクトを行えるのだろうか。それは自分の分野に責任を持った素晴らしい人材が集まっているからだと大坪氏は言う。「入社したての人でもこの分野では一番になろうと頑張っている。この会社では一人一人が重要人物」(大坪氏)。
個人が会社に求める価値観は人それぞれだが、「感謝されたり革新を起こしたりすることが魅力の1つになると思っている。その種をいろんなところにまいていく。それが時計や宇宙、工作機械などになる」(大坪氏)。また重要なのが、「『絶対これがやりたい』という個人の思い」だ。社外の人も巻き込んで人がつながることで、いろんなプロジェクトとして形になっていく。
「モノがすぐにできてくるという町工場のイメージを持ち続けながら開発もできる、素晴らしい仲間と夢をかなえる町工場にしていきたい」(大坪氏)
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