軽自動車のためのプレミアムタイヤ、ブリヂストンが5年をかけて開発:タイヤ技術(2/2 ページ)
ブリヂストンは、同社のプレミアムブランド「REGNO」から軽自動車専用タイヤを発売すると発表した。REGNOらしい静粛性や乗り心地を軽自動車でも実感できるよう専用に設計を見直し、タイヤの性能にこだわる軽自動車ユーザーの増加に対応している。
5年がかりの製品化
全高の高いハイトワゴン系の軽自動車に目立つふらつきを抑えて乗り心地を向上するため、タイヤのパターンだけでなく形状も左右非対称にした。振動を抑える役割も担う踏面のパターンや、側面の剛性を最適化している。これにより、車線変更時に横方向に掛かる加速度の変動を抑え、ドライバーのハンドリングをしやすくした。
軽自動車は普通乗用車と比べてタイヤの径が小さく、同じ距離を走っても回転数が1.2倍になる。そのため早く摩耗しやすい。また、街中での小回りやハンドルの据え切りで摩耗が偏りやすい傾向もあるという。耐摩耗性を向上しながら、濡れた路面でのブレーキ性能や転がり抵抗を維持しなければならない。
タイヤの長寿命化に向けた耐摩耗性向上を目指し、「3D M字サイプ」や「チャンファリング」といった技術により均一に地面に接するようにした。この結果、長寿命が特徴のECOPIA EX20Cと比べて摩耗寿命を10%延ばした。長寿命化に加えて「制動力向上にも効果があり、軽自動車でも搭載が増えている自動ブレーキにも適しているのではないか」(山口氏)としている。
また、ウエット性能と低燃費性能を両立するため、シリカや「サステナブル分散性向上剤」「シリカ増量ウエット向上ポリマー」といった材料の配合比率を見直した。これらの技術により、濡れた路面での停止距離はECOPIA EX20Cと比較して4%短縮しながら、転がり抵抗はECOPIA EX20Cと同等を維持した。
軽専用のプレミアムタイヤの企画は2010年頃からスタートしていた。同社のマーケティング部門が軽自動車でもプレミアムタイヤの需要が増えると見込み製品化を要望していたのだ。しかし、実際に設計してみると「軽自動車のサイズでREGNOブランドにふさわしいものを作るのは難しかった」(長島氏)という。
「ブリヂストンの総力を結集して最高峰、最高級の性能で軽自動車専用タイヤを作り込む」(同氏)ため、営業から開発、生産まで部門を横断した組織「チームREGNO」で商品開発した。中堅の年代が中心メンバーとなって打ち合わせを繰り返した。
設計担当として参加した同チームの櫻井太郎氏は「軽自動車のためだけに性能を追求するのは、セダン/クーペ兼用のような従来製品の開発とは違う大変さがあった。軽自動車の使われ方やニーズ、車両の特性、軽自動車特有の技術課題を全て設計に反映するため、何度も各部署に通って話を聞いた」という。
量産設計を担当した岡崎卓也氏は、プレミアムタイヤとして技術を盛り込んだ同製品を生産する難しさについて「細かなサイプが施されているとタイヤを金型から外しにくくなる。コンピュータ上でのシミュレーションや、タイヤの小さいピースを試作する実験が重要になった」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 軽ハイトワゴンにも「しっかり感」、ミニバン専用タイヤの「トランパス」が展開を拡大
東洋ゴム工業は、ミニバン専用タイヤ「TRANPATH(トランパス)シリーズ」の2014年向け新製品として、環境性能と安全性能の両立に加えて、ふらつきのない「しっかり感」を追求した3品種を発表した。中でも「TRANPATH LuK」は、需要が拡大しているハイトワゴン/スーパーハイトワゴンタイプの軽自動車向けとなっている。 - タイヤの転がり抵抗を測る日本唯一の“原器”は小平市にあった
東京都小平市にあるブリヂストンの中核研究開発拠点「技術センター」には、新たなタイヤを開発するためのさまざまな試験装置が設置されている。同社が報道陣に公開した、タイヤの転がり抵抗を計測する日本唯一の“原器”と呼べるような標準試験機や、時速400kmで走行中のタイヤの接地面を計測できる「アルティメットアイ」などについて紹介しよう。 - 未来のタイヤが19世紀のものと同じ形になる理由
工学院大学が開催したプレス向けセミナーにおいて、同大学 機械創造工学科教授の中島幸雄氏が「将来のタイヤ像を提案する」をテーマに研究内容を紹介。環境規制やエコカーの普及が進む中で「タイヤの形は19世紀のときと同じになる」と語った。 - タイヤがセンサーになる技術を世界初の実用化、2020年までに一般車に展開
ブリヂストンは、タイヤで路面状態をセンシングする技術「CAIS(カイズ)」が冬季の高速道路管理に採用されたと発表した。今後は、鉱山用トラックやバス、航空機などでの活用も見込んでおり、2020年までに一般の乗用車への展開も目指すとしている。 - 燃費が良くなるタイヤの新材料、ブリヂストンと花王が共同開発
ブリヂストンは、新たなタイヤ用ゴム材料を花王と共同開発したと発表。ブリヂストンの基盤技術「ナノプロ・テック」と、花王の界面制御技術の組み合わせにより、シリカを従来より多く含ませることのできるゴム材料の開発が可能になった。燃費性能やウェットグリップ性能を高めたタイヤの開発に貢献できるという。