インダストリアルインターネットコンソーシアムが目指すもの:製造業IoT(4/4 ページ)
米国のIoT推進団体として注目を集めるインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)だが、実際にどういう方針で取り組みを進めているのだろうか。日本ナショナルインスツルメンツが開催したユーザーイベント「NIDays 2015」では、クロージングキーノートとして、IoTの産業実装を推進するインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)の日本代表を務める吉野晃生氏が登壇。IICの取り組みと日本の動きについて紹介した。本稿では、この講演の内容と吉野氏へのインタビューをお送りする。
「IoTによる新たなビジネスモデル創出を実現したい」
ここからは、吉野氏へのインタビューをお伝えする。
MONOist もともとどういう経緯でIICの日本代表を務めることになったのですか。
吉野氏 IICのCEOは、技術標準化団体「Object Management Group(OMG)」CEOのリチャード・ソレイ(Richard Soley)氏が務めている。私は日本OMGの代表理事を務めていることから、そのつながりで日本代表を務めることになった。具体的には広報活動などを中心に日本企業とIICとの間をつなぐ活動を進めている。
MONOist IICの日本での取り組みとしてどういうことを重視していますか。
吉野氏 近々IICの日本支部を立ち上げるつもりだ。既にいくつかの企業が直接IICに参加しているが、これらの企業はほとんどが大企業だ。日本支部としては、直接IICに参加できないような中小企業がIICに参加して世界に新たなビジネスモデルや技術力を発信できるようにしたいと考えている。世界の状況を見ても、新しいイノベーションは大企業からよりも、中小企業やベンチャー企業から生まれている。IoTを活用した新たなビジネスモデル創出を目指す。
MONOist 現実的にはIoT活用については、インダストリー4.0を中心とした製造業や製造現場が関心の中心のような気がします。こうした関心についてはどう考えますか。
吉野氏 われわれの活動の中で多くの企業を訪問しても、大企業のほとんどはインダストリー4.0などと同様のスマートファクトリーの実現に関心があるように見える。本来、IICで目指すべき新たなビジネスモデルや、マーケティングに立脚したブレイクスルーを狙うような動きにはつながっていないのが、難しいところだ。
IoTで新しい価値を生み出すには「ビジネスモデル」をもっと重視しなければならない。日本ではその議論があまりないのが、課題だと感じている。
これらを具体的に支援していくためには、IICの日本支部を作るだけではなくて、より具体的な支援が必要になるのではないかと考えている。そこで、日本OMG内にビジネスモデル変革の知見を集め、具体的な戦略立案や教育支援などを行う「Industrial Internet Institute」を設立する。直接的にIICが目指す方向性に踏み出していけるように支援する仕組みを作る。
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