リコーダー内部の複雑な空気の流れを解析し、新しい楽器デザインへ:CAE事例
リコーダーを演奏する際の楽器内部の複雑な空気の流れがどのように発生し、どのように音が広がり空気中を伝わっていくかを予測。解析結果を生かした研究で将来の楽器デザインの革新へつなげる。
ヴァイナスは2015年11月12日、豊橋技術科学大学による管楽器内部における空気挙動と音伝達の解析事例を発表した。この事例ではリコーダーを演奏する際の楽器内部の複雑な空気の流れがどのように発生し、どのように音が広がり空気中を伝わっていくかを予測した。同社が販売する流体解析用高品質メッシュジェネレータ「Pointwise (ポイントワイズ)」(開発元は米Pointwise)が使用された。
これまで多くの研究者が、フルートやリコーダーなどの管楽器のパイプ内の渦との共振からなる流体音響相互作用現象について、「Howeの渦理論」などの理論解析や簡略化した形状に対する解析を用いて調査してきたが、楽器内部の圧力・密度の変動や渦の発生のメカニズムは詳細に解明されていなかったという。
同校ではそれを解明するために、リコーダー内部の空気の挙動を詳細に捉えるために8200万点のリコーダーのメッシュモデルをPointwiseで生成。同校の内製コード「AADNS(Aeroacoustic Direct Numerical Simulation)」を用いて、スーパーコンピュータ「FX10」(東京大学、九州大学)の約100ノードを費やし、約2週間かけて大規模な解析を実行した。
今回の解析に携わった同校 機械工学系 助教 横山博史氏は、今回の結果を生かし、楽器形状が音に及ぼす影響を明らかにしていくことで、将来の楽器デザインの革新に貢献できるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- JAXA発のCFDソフト、コア数やジョブ数で課金せず年間180万円〜で提供
ヴァイナスはJAXAが開発した、圧縮性流体解析ソフト「FaSTAR」とメッシュジェネレータ「HexaGrid」を最適化設計向けに高機能化し、商品化する。HPCクラウドサービス「CCNV」経由で提供予定だ。CCNVはスパコン「京」にも対応予定だ。 - 自動車の騒音もトンボの羽ばたきもCAEが解く
空力分野の解析は、自動車や鉄道車両などの騒音検証や、新エネルギー開発、トンボの飛翔メカニズム解明など……多岐に応用されている。 - シーリングファンの回転挙動を解析、試作回数を大幅削減
パナソニック エコシステムズでは、強度、振動・騒音解析にMSC Nastran SOL400およびRotor Dynamicsを用い、シーリングファンなど回転体の動作を解析。試作前にさまざまな検討ができるようになり、手戻りの抑制や開発コストの削減に成功した。 - より良い音響空間を生みだすためのCAE
人の感性が左右し、目に見えない音響工学の世界でCAEはどう活用しているのか。建築設計でもフロントローディングの概念は同じだ。