自動車の騒音もトンボの羽ばたきもCAEが解く:踊る解析最前線(7)(1/3 ページ)
空力分野の解析は、自動車や鉄道車両などの騒音検証や、新エネルギー開発、トンボの飛翔メカニズム解明など……多岐に応用されている。
近年、CAEによる解析技術が急速に発達しつつあるのが、音響解析の分野だ。一言で音響解析といっても、その手法や対象領域は多岐に渡るが、中でも自動車や鉄道車両などの開発で重用視されるのが、空力騒音の解析である。自動車や鉄道車両が走行する際には、その周囲に空気の流れや渦が生じる。これが原因となって発生する騒音を解析し、抑制することがその目的だ。
この分野の最前線で長く研究を続け、多くの成果を挙げているのが、豊橋技術科学大学 機械工学系の飯田 明由教授だ。飯田氏は同大学を卒業後、日立製作所 機械研究所で新幹線の低騒音化やコンピュータ冷却技術などの研究に従事した後、2001年に工学院大学で助教授として、そして2008年から母校の豊橋技術科学大学で教授として、空力音響を中心とした研究活動を行っている。
本稿では飯田氏に空力解析および音響解析の現在と未来について、さらには同氏が携わるそのほかの研究分野についても話を聞いた。
自動車の車体を対象にした空力音響解析
飯田氏が現在携わっている空力騒音の研究は、主に自動車メーカーからの依頼に基づくものだという。自動車の車体にはさまざまな突起物やへこみ部分が存在するため、これが走行中に空気の流れに変化をもたらし、渦を発生させる。この空気の渦が原因となり、例の「ヒュー」「ゴー」といった騒音を発生させるのだ。従って、この騒音を抑制するには、車体の形状に起因する空気の流れと騒音との間の因果関係を解明する必要がある。
「車体の突起物の代表例であるドアミラーに関しては、すでに多くの研究成果が挙がっている。現在はむしろ、サンルーフやドアのすき間といった、車体のへこみ部分が原因で発生する空力騒音を主な研究対象にしている」(飯田氏)。
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