フォルクスワーゲンの排ガス不正から始まる、自動車メーカーのEVサバイバル:和田憲一郎の電動化新時代!(17)(4/4 ページ)
排気ガス不正問題で窮地に追い込まれたフォルクスワーゲンが、突然、今後の環境対応車の軸足をディーゼルエンジン車から電気自動車に移すと公表した。それに呼応するかのように、トヨタ自動車、ボルボ、ホンダなども、次々と電気自動車やプラグインハイブリッド車に注力する方針を表明している。これらの動きにはどのような意味があるのだろうか。
日系自動車メーカーは苦しい立場に追い込まれる
しかし、今後の見通しを考えると、日系自動車メーカーにとって厳しいものがある。それは、ドイツの自動車メーカーで組む連合艦隊は、2017年ごろから、30車種を超えるEV/PHEVを欧州、米国、中国、そしてアジア諸国へと次々に上陸させるであろう。そうなると、これまで日本が一定のポジションを確立していた市場の競争も一気に激化する。
しかし、現時点でまだEV/PHEVの車種をそれほど多く持たない日系自動車メーカーは、次第に苦しい立場に追い込まれ、結果的に経営も厳しくなるのではと危惧する。ただ、このような状況においても、まだどの方向に進むかちゅうちょしている自動車メーカーもあり、危機感に温度差を感じる。
EV/PHEVなどの市場が拡大すれば、参入希望メーカーも増加し、一気にブームとなり活況となることは間違いない。しかし、その後に待っているのは市場の寡占化であり、負けた企業の淘汰でもある。これは部品メーカーも同様であろう。もしこれから参入を考えているのであれば、撤退条件も同時に考えることが必要となる。
世界を見渡すと、自動車メーカーの数は、米国ビッグ3+1(Tesla Motors)、ドイツ3(VW、BMW、ダイムラー)などに比べて、日本は大手だけでも8社と多い。今回の、VWがEV/PHEVに軸足を移すという公表によって、2025年ごろまでに始まる成長と淘汰というサバイバルゲームを争う号砲が鳴ったといえるのではないだろうか。
そして、現在話題となっている自動運転などの新技術の本格的導入は、この戦いが終わった2025年以降に、生き残った企業によって順次搭載が始まっていくように思われる。
「急激な構造変化の時代にあっては、生き残れるのは、自ら変革の担い手、チェンジ・リーダーとなる者だけである」とは経営学者P.F.ドラッカー氏の名言である。これは決断を迫られている日系自動車メーカーにも当てはまるのではないだろうか。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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