もはやPHEVやEVは特殊なクルマではない――東京モーターショー2015レポート:和田憲一郎の電動化新時代!(18)(1/3 ページ)
コンセプトカーやスポーツカーに注目が集まる「東京モーターショー2015」だが、次世代エコカーといわれてきたプラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)を各社が多数展示している。これらを見ていると、もはやPHEVやEVが特殊なクルマではなくなりつつあることが感じられる。
「第44回東京モーターショー2015」が東京ビッグサイトで開幕した。2013年の来場者数は約90万人であったが、今回は話題のクルマも多く、100万人近くになるのではないだろうか。既に各社のプレスブリーフィングの様子はメディアで伝えられている。
華やかなモーターショーなので、どうしてもコンセプトカーやスポーツカーの展示に注目が集まりがちだ。それはそれで良いことだが、プラグインハイブリッド車(以下、PHEV)、電気自動車(以下、EV)、燃料電池車(以下、FCV)について、これから発売されるクルマや、既に量産されている車両の展示もあり、そこから見えるガソリン車との差別化について、気付いたことを述べてみたい。
セグメンテーションを重視するドイツ勢
一般的に、ガソリン車やハイブリッド車(以下、HEV)に比べて、PHEVやEV、FCVはどうしても特殊なクルマとして見る傾向がある。つまり、自動車メーカー、ユーザー含めて、これまでとは違う次世代のクルマであるから、パワートレインのみならず、外観も差別化しなくてはならないと。
黎明期は確かにそうであろう。日産自動車のEV「リーフ」は独自のスタイリングをしており、BMWのEV「i3」やPHEV「i8」、さらにはトヨタのFCV「MIRAI」も確かに新時代を思わせるスタイリングのクルマである。
しかし、今回、フォルクスワーゲン(VW)、アウディ、BMWなどの多様なPHEV/EVを眺めながらふと疑問を感じた。もはや、ドイツ自動車メーカーはそう感じてないのではないかと。今後、PHEV/EVに軸足を移していくことを打ち出しているが、これらのクルマが市場投入される場合、イメージリーダーとなる車両を除いて、特殊なクルマを作る必要がないのではないかと。
現在、彼らのラインアップの中には、ガソリン車、ディーゼル車があるが、それと同様にPHEVやEVがあっても良いと考えている節がある。例えば、以下の写真で紹介するBMWのPHEV3車種を見ても、ガソリン車と異なる箇所は、両サイドに給油口のフィラーネックがあるか、充電用のリッドがあるか程度である。外観からはガソリン車なのかPHEVなのか、すぐには分からない。
VWのPHEV(「パサートGTE」、「ゴルフGTE」)もそうであるが、違いはエンブレム、もしくはその周辺部が開口して充電口が出てくるか否かである。外観そのものはガソリン車とほとんど同じである。
彼らの考え方の根底には、クルマのコンセプトとセグメンテーション(欧州委員会の分類ではセグメントA〜F、S、M、Jに分けられている)を重要視しており、その延長線上でラインアップを考えている。そして、パワートレインはその一部であり、エンジンであろうがモーターであろうが、機能を差別化しただけであり、クルマとして差別化したものではない。
これは大きな考え方の相違である。日本で言えば、リーフなどはこれまでのラインアップにはないスタイリングをしており、これまでのガソリン車とは一線を画していることが一目で分かるような狙いがあった。しかし、日産自動車のラインアップでどのように位置付られるか、その上下のセグメンテーションでどうなるかは難しいところである。
もう一度言うが、ドイツ勢は自社のセグメンテーションを消すことなく、その中のパワートレインのみを変更してきている。その場合、自然にガソリン車→HEV→PHEV→EVと変わろうとも、ユーザーにとって何ら違和感はない。差別化はセグメンテーションで、クルマのスタイリング含む外観や内装で行っている。このことは、PHEV/EVに対しても、クルマとして、もはや市民権を与えようとしているのではないだろうか。
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