「PLMを考え直すときが来た」:ものづくり支援ソフトウェア製品レポート(2/2 ページ)
アラスジャパンはユーザーイベント「Arasコミュニティイベント(ACE)2015 Japan」(2015年9月2〜3日に)を開催。同イベントではアラスジャパンの社長を務める久次昌彦氏が登壇し、昨今の製品開発を取り巻く環境変化とそれに向けた同社のPLM製品の展開方針について語った。
製品情報とソフトウェアをつなぐOSLC
ではArasが提供するオープンソースPLM「Aras Innovator」の場合、どのようにソフトウェアを管理していけばよいのか。久次氏は一般的なPLMの例として、他の業務アプリケーションと連携させるスクリプトを作り、コマンドライン上からPLMに対してチェックイン/チェックアウトできるようにするといった方法を紹介した。
しかしこの方法の場合、PLMとエディタが密に連携する必要があり、柔軟性には欠けてしまう。さらに久次氏は「ソフトウェアの領域は進化が早く、言語ごとに常に最適なツールを選択する方が良い。さらにユーザーからは開発ツールに加え、バージョンやプロジェクトの管理ツールなどを常に最新のものに置き換えながら運用していきたいというニーズをも出てきている。しかしそのたびに個々のツールを連携させるのは難しいという課題もある」と述べる。
そこでArasはAras Innovatorとソフトウェア開発領域の連携に、オープンインタフェース「OSLC(Open Services for Lifecycle Collaboration)」を採用。共通プロトコルを定義することで、ツールの種類にかかわらずソフトウェアを共同開発できる仕組みを構築している。
OSLCを利用することで、製品側(PLM側)とソフトウェア側からのどちらから設計変更を行っても、柔軟に反映できるようになっている。ソフトウェア側のALM(Application Lifecycle Management)には「IBM Rational Team Concert(RTC)」などを使い、このRTCとメカ/エレ系CADなどの製品情報の管理するAras InnovatorがOSLCを通して相互連携する仕組みだ。
例えばメカやエレクトロニクスの領域で設計変更があった場合、Aras Innovator側で変更表を起票する。それに応じてソフトウェア側を改修する必要がある場合、OSLCを通して対応するソフトウェアのリポジトリを指定し、RTC側に作業項目を伝えるという仕組みだ。ソフトウェア側で設計変更がある場合は、この逆の手順を踏めばよい。今後もさらにこうした異なる領域のデータ連携ソリューションを提供していく予定だという。
同氏はこの他に、製品側とソフトウェア側のデータ管理がシームレスに連携することで、設計開発過程のトレーサビリティ(追従性)を高めることが製品の機能安全に寄与する点なども説明。さらにPLMで管理している製品情報を利用して、技術文書や取り扱い説明書を作成できる新機能を2015年9月中を目標にリリースする予定であると語っている。
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