富士通の工場向けIoT活用モデル、IICがテストベッドに承認、日本企業初:製造IT導入事例
富士通は同社の社内工場にIoTを活用した“工場の見える化”を実現するソリューションモデルを米国のインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)に提案し、このほど日本企業では初となるテストベッドとして承認されたと発表した。
富士通は2015年9月15日、同社の工場にIoT(Internet of Things、モノのインターネット)を活用したソリューションモデルを米国のインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)に提案し、このほど日本企業では初となるテストベッド(試験用プラットフォーム)として承認されたと発表した。
同社が提案したのは「Factory Operations Visibility and Intelligence Testbed」と呼ぶモデルで、工場内の機器に装着したセンサーからリアルタイム取得した稼働情報などと、関連する製造計画や作業実績といったデータをクラウド上で統合する。データ活用による“工場の見える化”を目指した手法だ。
製造現場の状況が関係者間でデジタルに共有できるため、現場の改善検討のスピードアップや、他部門、他工場との比較による最適な改善手段の立案が行えるという。さらに多品種少量生産の自動製造工程や、製品修理などのマニュアル工程の改善活動に関わる工数の大幅な削減、製造工程における最適なチーム編成、人材育成にも寄与するとしている。
富士通は同ソリューションをグループ企業である富士通アイ・ネットワークシステムズの山梨工場と、島根富士通の工場での実践とノウハウに基づいたテストベッドとして提案。今回その有用性が評価され、IICにおいて日本初のテストベッドとして承認された。
現在、欧州や米国を中心に製造工程を高度化させる「次世代モノづくり」を目指す動きが加速している。ドイツでは連邦政府が主導する国家プロジェクト「インダストリー4.0」を推進。これに対し、米国における製造革新への取り組みの中心組織となっているのがIICだ(関連記事)。
IICは2014年3月27日に米国で設立された団体で、産業分野におけるIoT活用のデファクトスタンダードを推進している。2015年9月現在で参加企業は26カ国200社を越え、ユースケースの分析、アーキテクチャ/フレームワークの策定、テストベッドによるエコシステムの構築などを進めている。富士通は第1回会議からIICに参加しており、ワーキンググループの運営などに積極的に関わっているという。
今回富士通の提案したテストベッドがIICに承認されたことで、他のさまざまな企業がこのモデル上でより生産を効率化するなどの付加価値技術/機能の開発が行えるようになる。富士通は今後、他の企業とともに同社の実践内容の評価と共通アーキテクチャの策定、プロトタイプの構築・検証を進める。さらにそこから得たノウハウを取り入れ、多様なニーズに対応できるソリューションの強化を目指すとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「日本版インダストリー4.0」のハブに! 富士通が次世代モノづくり戦略を発表
富士通は「次世代モノづくり」実現に向けた新たなビジョンと、それに対する新サービスの提供を発表した。富士通では2012年から「ものづくり革新隊」として、製造業として自社のノウハウと、提供するICTを組み合わせた製造業支援サービスを展開しており、今回はその流れをさらに拡大するものとなる。 - 「日本版インダストリー4.0」の萌芽か!? 「つながる工場」に向けIVIが始動
ドイツのインダストリー4.0や米国のインダストリアルインターネットコンソーシアムなど、ICTを活用した新たなモノづくりが全世界で大きな動きを見せる中、国内でも企業間の垣根を越えて、標準化を進めようという動きが生まれる。「つながる工場」の実現を目指すコンソーシアム「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」の設立だ。 - 富士通のPC工場、勝利の方程式は「トヨタ生産方式+ICT活用」
コモディティ化が進むPCで大規模な国内生産を続ける企業がある。富士通のPC生産拠点である島根富士通だ。同社ではトヨタ生産方式を基にした独自の生産方式「富士通生産方式」を確立し、効率的な多品種少量生産を実現しているという。独自のモノづくりを発展させる島根富士通を小寺信良氏が訪問した。 - ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」という言葉をご存じだろうか? 「インダストリー4.0」は、ドイツ政府が産官学の総力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクトだ。インダストリー4.0とは何なのか。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。 - 産業機器向けIoT団体「IIC」、その狙い
IoTに力を入れるIntelだが、IoT団体としてしては「Open Interconnect Consortium」(OIC)と並行して「Industrial Internet Consortium」(IIC)も設立、積極的に関わっている。そのIICの狙いを説明する。キーワードは「Industrial Internet」だ。