複合体RISCが標的RNAを正確に切る仕組みを1分子レベルで観察:医療技術ニュース
東京大学は、特定のタンパク質の合成を抑えるRNAi(RNA干渉)で、RISCが標的RNAを切断する過程を1分子レベルで観察することに成功したと発表した。
東京大学は2015年7月3日、特定のタンパク質の合成を抑えるRNAi(RNA干渉)で、RISCが標的RNAを切断する過程を1分子レベルで観察することに成功したと発表した。同大大学院新領域創成科学研究科の上田卓也教授、同分子細胞生物学研究所の泊幸秀教授、京都大学物質−細胞統合システム拠点(iCeMS)の多田隈尚史特定研究員らの研究チームによるもので、7月2日に米科学誌「Molecular Cell」に掲載された。
RNAiは、小さなRNAが特定のタンパク質の合成を抑える現象。小さなRNAとアルゴノートと呼ばれるタンパク質から成る複合体RISCがRNAを切断することで起きるが、標的となるRNA分子をどう切断しているか、その詳細な分子機構は明らかにされていなかった。
今回、同研究チームでは、1分子イメージング技術を用いて、試験管内でRISCが標的となるRNAを切断する様子をリアルタイムで観察することに成功した。モデル生物のショウジョウバエを用いて行われた研究では、スライドガラス上に蛍光標識した標的RNA鎖を固定。次に、内包する小さなRNA鎖に蛍光色素を付けたRISCを加え、スライドガラス上でRISCが標的RNA鎖を切断し、切断断片を放出する過程を1分子レベルで観察した。
従来、RISCに内包する小さなRNA1本鎖は、「シード」と「その他」という2つの部分に分かれて役割分担をしていることが示唆されていた。今回の研究では、RISCはまずシード部分で標的RNAに結合し、その後、標的が正しいかをその他部分で検証していることが観察された。標的切断後は2つの部分に明瞭な役割分担はなく、2つに分断された標的はランダムに放出されることが分かった。
同成果は、RISCが標的を切断する仕組みを解明するもので、病気の原因となるタンパク質の産生を抑えることで遺伝子治療を行うなど、RNAiを応用した次世代医薬品の開発が期待されるとしている。
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