完全自動運転=レベル4は2030年以降に実用化、ネックは法整備:自動運転技術(2/2 ページ)
現在、自動運転技術の指標となっているのが、米国運輸省の国家道路交通安全局(NHTSA)が発表している自動運転システムの自動化レベル分類である。この分類で最高レベルとなるレベル4、乗員が行き先を決めるだけで運転操作を全く行う必要のない完全自動運転システムが実用化されるのは2030年以降になりそうだ。
レベル2の代表はフォルクスワーゲンの「TJA」
レベル2の自動運転システムとして、矢野経済研究所が例に挙げるのが、フォルクスワーゲングループが2014年末発表の「パサート」に採用した「Traffic Jam Assist(TJA)」である。
TJAは、前方車両に追従走行するオートクルーズコントロールと車線維持を組み合わせた機能である。しかし、完全停止した場合も自動で始動する点で、従来の運転支援システムと異なる。このため、TJAはレベル2に該当すると考えられているという。
米国市場では、日米欧各国の自動車メーカーが自動運転システムの試験走行を実施中で、TJAと同様の機能を搭載した車両が2016年以降に米国でも発売される予定である。さらにドイツの高級車メーカーは、自動駐車システムを2016〜2017年ごろに発売する量産車に搭載する計画である。
このため2020年におけるレベル2の自動運転システムの搭載台数は、世界全体で360万台となる見込み。さらに、コストダウンが進んでミドルクラス以下の車種にも採用されるようになり、2025年には1989万台、2030年には3155万台に拡大する。これに合わせて、レベル1の自動運転システムの搭載台数は減少する。2025年は3442万台、2030年には2350万台となっている。
レベル3は2030年に1000万台市場へ
レベル3の自動運転システムは、高速道路などで用いるというの限定条件はあるものの、緊急時以外はドライバーが運転作業に介入しない。レベル2よりも技術的ハードルが高く、現状使われているミリ波レーダーや車載カメラの他に、広範囲の物体認識が可能なレーザスキャナ、車車間通信や路車間通信(V2X:Vehicle to X)、3次元地図データ、そして法整備なども必要になる。
既に日米欧各国で、レベル3の実現に向けて民間や政府が協力して技術開発や法改正を推進しており、2018〜2019年ごろには、レベル3の自動運転システムが米国市場で実用化されるという。2020年におけるレベル3の自動運転システムの搭載台数は、米国・欧州市場を中心に13万8000台、2025年には世界全体で361万9000台、そして2030年には979万8000台まで増える見込みだ。
レベル4の自動運転システムについては、法整備という課題があるものの、事故責任の所在が明確で、国などから特別に許可の下りた企業が商用目的(タクシーやバス、運輸など)で運用するケースで実用化される。2030年までに一部の国や地域で登場すると予測され、2030年の世界全体の搭載台数は70万6000台である。
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