アウディの自動運転車とサーキットで対決、人間のドライバーは勝てるのか:自動運転技術(3/3 ページ)
アウディが米国カリフォルニア州のソノマ・レースウェイで自動運転車の体験試乗会を開催。アウディの「RS7」ベースの自動運転車「ロビー」と、かつて自動車レースで腕を鳴らした筆者が運転するRS7で、どちらが早く周回できるかで対決した。果たしてその結果は!? ロビーの自動運転の仕組みなどについても紹介する。
「ロビー」の自動運転技術の詳細
では、ロビーの自動運転技術はどのような仕組みになっているのだろうか。
アウディ側が行ったプレゼンテーション、さらに試乗会を実施した2日間に、アウディ技術関係者とスタンフォード大学関係者に行った聞き取り調査を基に説明しよう。
素人考えだと、コースレイアウトがあらかじめプログラムされていると思ってしまうが、実はそうではない。
最初に行う作業は、コースを時速50km程度で2周することだ。それぞれの周回で、コースの右端と左端に沿って走行する。これにより、コースの位置情報を細かく収集することができる。
位置情報についてはRTK(リアル・タイム・キネマティック)式のGPSを用いている。これは地上に移動点と固定点の2点を持つGPS受信方式で、位置精度は、一般的な量産型カーナビゲーションシステムの10m前後から、一気にcm単位に改善される。固定点となる基地局は三脚に搭載する程度の軽量なもので、測量や農業分野で活用されている。固定局からロビーへの位置情報の送受信は4G回線を使う。
こうして得られた詳細な位置情報を基に、ロビーのメインプロセッサはコースで走行すべきベストラインをはじき出す。その解析結果に対して、現地での状況をアウディの技術者が確認し、補正する。あくまでもイメージとして表現だが「人間が行う補正は5%程度」(アウディの技術者)だという。
走行中の車両の制御については、アクセル、ブレーキ、ステアリングの操作データとエンジン、トランスミッション、サスペンション、そしてスタビリティコントロールをCAN通信を通じてデータをやりとりしながら、メインプロセッサがリアルタイムでデータ解析を続ける。さらにもう1台のプロセッサがあり、ここでは「4〜6秒先に起こる走行状況を予測し、メインプロセッサの解析データを補正している」(スタンフォード大学関係者)とのことだった。
量産化に向けた動き
ロビーやボビーで検証しているのは、あくまでもサーキット専用の自動運転だ。こうした技術は量産車向けの基礎的な技術として活用される。
量産型に近いのが、2015 International CESに出展されたジャックだ。現行のA7に装着されているADAS(先進運転支援システム)をベースに、前後バンパーにフランスのValeo製レーザーレーダー(ライダー)を搭載し、それらのセンサーから得た3D画像データを活用して走行する。
アウディ関係者によれば、ジャックで実証試験を行っている技術は、同社のフラッグシップモデルである「A8」の次期モデルに搭載することが決まっている。
また今回は詳細なプレゼンテーションが行われなかったディープラーニングについては、NVIDIAとアウディ本社技術部門が連携して、実証試験を進めているという。
筆者プロフィール
桃田 健史(ももた けんじ)
自動車産業ジャーナリスト。1962年東京生まれ。欧米先進国、新興国など世界各地で取材活動を行う。日経BP社、ダイヤモンド社などで自動車産業、自動車技術についての連載記事、自動車関連媒体で各種連載記事を執筆。またインディカーなどのレース参戦経験を基に日本テレビなどで自動車レース番組の解説も行う。
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