「エクストレイル ハイブリッド」のモーターシャフトに成形シミュレーションを活用:CAEイベントリポート(2/2 ページ)
日産自動車ではフローフォーミングで成形されたハイブリッド車のローターシャフトに対して、開発の効率化のため、成形シミュレーションの適用を検討した。ベンチマークテストで解析と実際の加工物との一致を確認できたという。
シミュレーションツールの検証には、成形シミュレーションツール「Simufact.forming」および他の2本を用い、フローフォーミング工程のうち、裂開工程について検証を行った(図)。まず材料の円盤をマンドレルで固定し、400rpmのスピードで回転させ、2つのローラーをそれぞれ上下から押し付けると、材料がつぶされて左右に分かれていく。材料は柔らかめのSAPH270相当で、厚さは8mmである。ローラーの送り速度は120mm、材料のクランプ力は450kNである。裂開成形でローラーの侵入量が25mmのときの根元の板厚について評価した。
あるソフトウェアでは、成形形状が合っておらず、また途中までしか計算ができなかった。別のソフトウェアでは、計算に32日間かかり、また計算精度は56.2%のずれがあった。Simufact.formingは、図のように変形形状が実際のものとほぼ一致した。裂開角度については3.2%、板厚については1.3%の差であり、問題ないと判断できる範囲だったという。なお計算には9日間かかった。
検証した結果、「いろんなソフトウェアを使用しているが、Simufact.formingで我々が目指している塑性加工ができそうだと分かった」(田口氏)。グループで扱っている、絞り成形、しごき成形、鍛造、フローフォーミング、転造、ロール転造などの塑性加工はほぼ再現できるのではないかという。課題としては、計算時間がまだ長いことや社内規格材料の材質データベースの充実、ソフトウェアの操作性などを挙げた。
今後の展望としては、プロセスチェーンの構築を目指し、後工程に解析結果をつなげていければという。プレスや溶接、塗装、組み立てなど生産CAEとの連携により、成形条件を早期把握し、対策を設計段階で織り込みたいとしている。また強度、耐久や衝突といったCAEとも連携することで、精度向上による試作回数の削減、不具合の早期洗い出しにまで持っていきたいということだ。
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