残留iPS細胞を選択的に除去する技術を開発、ALA技術を応用:医療機器ニュース
SBIファーマは、リプロセルとの共同研究で、iPS細胞由来の分化細胞を用いた再生医療で問題となる残留iPS細胞を、5-アミノレブリン酸(ALA)を使って選択的に除去する技術を開発した。
SBIファーマは2015年6月8日、リプロセルとの共同研究で、iPS細胞由来の分化細胞を用いた再生医療で問題となる残留iPS細胞を、5-アミノレブリン酸(ALA)を使って選択的に除去する技術を開発したと発表した。
従来、iPS細胞から心筋・神経・肝臓などの細胞を作製する際には、iPS細胞が変化せずに残留することがあり、それが生体に移植した際にがん化する恐れがあった。そのため、体細胞に変化した細胞群の中から、効率的に残留iPS細胞のみを除去する技術の開発が求められていた。
同研究では、がん細胞とiPS細胞に共通する特徴に着目。ALAを含んだ培養液中で、iPS細胞から変化させた体細胞に特殊な条件で光照射することで、残留iPS細胞のみを選択的に除去することに成功した。
ALAは、再生医療に適する安全なアミノ酸で、正常組織では人体に多様な働きを持つヘムという物質へ変化する。一方、がん組織では、プロトポルフィリンIXという物質へと変化し、蓄積するという特徴がある。このプロトポルフィリンIXは、特殊な波長の光を浴びると細胞を破壊する物質を生成することから、ALAは海外ではがん治療(光力学治療:PDT)の薬として承認されているという。
同技術は、iPS細胞技術を再生医療に応用する際に、大きな課題を克服する画期的な技術になるという。今後、再生医療を目指した研究開発の他、事業的用途としても幅広い利用が見込まれるとしている。
関連記事
- ヒトiPS細胞から硝子軟骨を作製、移植再生治療開発に前進
京都大学iPS細胞研究所の妻木範行教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞から軟骨細胞を誘導し、さらに硝子軟骨の組織を作製してマウス、ラット、ミニブタへ移植し、その安全性と品質について確認した。 - iPS細胞が自分にとってどう役立つのかを知る、日本科学未来館が新展示
日本科学未来館は2015年3月20日から、同館5階常設展示の「生命」エリアをリニューアルした「細胞たち研究開発中」などの新展示を公開する。注目を集めるiPS細胞をきっかけに、幹細胞と再生医療について基本から先端研究まで幅広く来館者に学び考えてもらうことを目的にした展示となっている。 - 創薬支援分野参入に向け、iPS細胞開発・製造の米企業を買収
富士フイルムホールディングスは、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーである米Cellular Dynamics Internationalを買収すると発表した。今回の買収により、iPS細胞を使った創薬支援分野に本格的に参入する。 - 医薬品の副作用を予測する新システム、iPS細胞由来の心筋細胞を活用
NEDOのプロジェクトの一環として、LSIメディエンスは、医薬品による心循環器系の副作用を評価するシステムを開発した。ヒトiPS細胞に由来する心筋細胞を活用することが最大の特長だ。ヒトiPS細胞を創薬の分野に生かす取り組みが始まっている。 - 細胞1個を正確に飛ばす、インクジェット技術はエレから医療へ
ピエゾ方式インクジェット技術を、医療やバイオテクノロジーの分野に応用する試みが始まっている。水を吐出できない、ヘッドが洗浄できないといった理由で医療やバイオ分野では普及してこなかったが、マイクロジェットはこうした課題に応える製品を開発している。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.