葉緑体の分裂が脂質の1種によって制御されていることを発見:医療技術ニュース
東京大学は、脂質の1種であるホスファチジルイノシトール 4-リン酸が、葉緑体の分裂を担うタンパク質(葉緑体分裂装置)の一部と結合することを発見し、分裂を抑制していることを明らかにした。
東京大学は2015年6月3日(★大学院総合文化研究科での発表は4/20★)、脂質の1種であるホスファチジルイノシトール 4-リン酸(PI4P)が、葉緑体の分裂を担うタンパク質(葉緑体分裂装置)の一部と結合することを発見したと発表した。同大大学院総合文化研究科の岡崎久美子学術研究員と和田元教授、国立遺伝学研究所の宮城島進也教授らの研究グループによるもので、同年4月13日付の「The Plant Cell」に掲載された。
光合成などの重要な機能を担う葉緑体は、植物細胞内で新しく作られることはなく、既存の葉緑体の分裂でしか数を増やすことができない。これまで、葉緑体にはPI4Pが存在することが知られていたが、その分裂に関与しているかは明らかにされていなかった。
今回、同研究グループでは、葉緑体に含まれるPI4Pの量を減らした状態でシロイヌナズナを育てた。その結果、細胞1個当たりの葉緑体の数が増え、葉緑体が小さくなったという。このことから、PI4Pが葉緑体の分裂を抑制していることが明らかになった。
また、葉緑体の分裂に異常があるシロイヌナズナを解析。PI4Pは葉緑体の分裂装置を構成するタンパク質の1つであるPDV1と結合し、別の構成タンパク質であるDRP5BとPDV1の相互作用を変化させ、DRP5Bの量を減少させることで葉緑体の分裂を抑制していることが示唆された。
同成果は、植物の成長の基本的な仕組みの理解につながるという。さらに、葉緑体の数や大きさを人為的に制御することで、デンプン粒の大きさが異なる作物品種の開発などが期待されるとしている。
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