燃料電池車「ミライ」で“バック・トゥ・ザ・フューチャー”が現実に!:今井優杏のエコカー☆進化論(18)(4/4 ページ)
燃料電池車「ミライ」の燃料は水素。この水素は、今までイラナイものだった下水汚泥からも作ることができる。でも、イラナイものでクルマが走るって、“バック・トゥ・ザ・フューチャー”の「デロリアン」と同じでは?
下水バイオガスから1日当たり燃料電池車65台分の水素を作れる
水素に関して、なかでも私が一番ワクワクしちゃったのが、「廃棄物から水素を取り出す研究が既に実用化されつつある」ということ。
去る2015年3月31日、福岡県の中部水処理センターで、下水バイオガスから水素を製造/供給する水素ステーションの完成が発表されました(関連記事:CO2フリーの水素を下水から作る、福岡市で燃料電池車へ供給開始)。下水処理の過程で発生する汚泥に含まれるメタンガスと水蒸気を反応させ、水素を作るというものです。
これまで焼却処分されていた汚泥から発生する1日当たり2400m3の下水バイオガスを使って、水素を3300m3作り出すとか! これで、燃料電池車を約65台満充填にできます!!
これまでバイオ燃料など、化石燃料から脱却すべくさまざまな代替燃料が登場しては消えて行きました。例えばトウモロコシ由来のバイオ燃料であれば、食料や飼料としての用途と競合してしまうというデメリットを抱えていました。
だけど汚泥は誰もイラナイものです。リアルな意味でゴミでした。処分にオカネも労力も必要とされるものだったのですから、ナイスアイデア!
しかもメタンガス……。これは汚泥を暖めたときに発生するものですが、このメタンガスもその辺に溢れているものです。
メタンガスと聞いて私が最初に思い浮かべたもの。それは稲作が当たり前なエリアに生まれ育った私が常に目にしていた、米を収穫したあとのわらの山でした。
米を収穫した後、わらを発酵させて堆肥に変えているのですが、このときにびっくりするくらいのメタンガスが出ます。メタンガスは温室効果ガスの1つですから、これが稲作を行っている全世界レベルで行われていると考えたら、と不安に思っていました。美味しく食べること、それが温暖化を促進していることになっているなんて、と。
また、人間を含めた動物の糞からもメタンガスが発生します。これこそ世界中の生きとし生けるものが排出する量たるや、想像を絶するもの。これらのメタンガスから効果的に水素を取り出せたら……ただ単に焼却処分で土に埋めて終わり、なんて消費するだけの世界から、エネルギー革命が起こりそうです。
さて、そこでバック・トゥ・ザ・フューチャーです。
ドクがしたように、直接ガソリンタンクに生ゴミを詰めることはまだ叶わないけれど、イラナイものが燃料になる、そんな世界の入り口に、私たちはもう立っているんですね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- >>今井優杏のエコカー☆進化論
- トヨタの燃料電池車「ミライ」は「あえて4人乗り」、プレミアム感と走りを重視
トヨタ自動車は、セダンタイプの新型燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を2014年12月15日に発売する。税込み価格は723万6000円で、国内販売目標台数は2015年末までで約400台。プレミアム感と荷室の広さ、そして走りの楽しさを重視したこともあり、5人乗りではなく4人乗りとなった。 - 燃料電池車「ミライ」を“解剖”
トヨタ自動車は「人とくるまのテクノロジー展2015」において、燃料電池車「MIRAI(ミライ)」のカットモデルや各種関連技術を展示した。ミライに搭載された部品は、自動車部品メーカー各社でも披露されており、さながら、会場全体を使ってミライを“解剖”しているような状況だった。 - 「ミライ」のショールームは水素ステーション内に併設
トヨタ自動車が2015年4月17日にオープンする、燃料電池車や水素の情報発信施設「TOYOTA MIRAI ショールーム」は、「イワタニ水素ステーション芝公園」内に併設される。