“意志ある踊り場”から踏み出すトヨタが育てたい“打者”:製造マネジメントニュース
トヨタ自動車が2014年度の連結決算を発表。売上高、営業利益、当期純利益ともに過去最高を更新するなど好調な結果となった。2014年度を“意志ある踊り場”と位置付けていた同社だが、代表取締役社長の豊田章男氏は「意志ある踊り場から実践の段階に入った」と語った。
トヨタ自動車(以下、トヨタ)は2015年5月8日、東京都内で会見を開き、2015年3月期(2014年度)の連結決算を発表した。売上高は前期比6.0%増の27兆2345億円、営業利益は同20.0%増の2兆7505億円、当期純利益は同19.2%増の2兆1733億円で、営業利益と当期純利益については2期連続で過去最高を更新。さらに売上高についてもこれまでの最高実績である2008年3月期の26兆2892億円を超える結果となった。
2期連続で最高益更新、原価低減活動の効果は着実に
ダイハツ、日野、中国合弁事業会社を合わせたグループ総販売台数は前期比3万5000台増の1016万8000台。一方、トヨタ単体の販売台数は、北米市場は堅調に推移したものの、消費税の引き上げにより販売が鈍化した日本市場や、新興国市場の停滞の影響により、前期比で14万4000台減となる897万2000台となった。
トヨタはリーマンショックによる赤字転落以降、持続的な成長基盤の構築を目指し、車両のモジュール化などによって部品の共通化を進める「Toyota New Global Architecture(TNGA)」の推進や、新規工場の建設凍結、既存工場の設備使い切りといった原価低減活動を進めてきた。こうした取り組みの結果、2014年度は販売台数の減少と諸経費の増加により2300億円の減益要因があったものの、原価改善による2800億円、さらに為替変動の影響による2800億円などの増益要因が上回り過去最高益の更新に至っている。
トヨタ 代表取締役社長の豊田章男氏は2014年5月の会見で、2014年度を持続的な成長基盤を固めるための“意思ある踊り場”と称していた。今回の会見で同氏は、2期連続で過去最高益を更新するなど好調な結果になったといえる2014年度について「グループ一丸となった原価改善活動や、仕入先、販売店の尽力、そして現場の一人一人の努力の積み重ねの結果」と語る。
「意志ある踊り場から実践の段階へ」
2016年3月期(2015年度)通期の見通しについては、売上高が前期比1.0%増の27兆5000億円、営業利益は同1.8%増の2兆8000億円、純利益は同3.5%増の2兆2500億円と、再び最高益を更新する見通しであると発表した。一方、グループ総販売台数は、前期比1万8000台減となる1015万台と予想している。
トヨタは2015年4月に方針を変更し、3年振りとなる新工場をメキシコに建設すると発表している(関連記事)。“意志ある踊り場”から一歩踏み出したとも捉えられるが、2015年度はトヨタにとってどういった位置付けの年となるのか。豊田氏は「持続的な成長に向けた歩みを着実に踏み出すのか、再び過去のトヨタへと後戻りするのかの大きな分岐点となる年だと捉えている。意志ある投資を行い、良いクルマ作りのための生産現場の改善をさらに進める」と説明した。
さらに同氏はトヨタの現状について「意志ある踊り場から実践の段階に入った」と語る。その“実践”の具体例となるのが先述した新工場建設の解禁や、2015年秋頃を予定しているTNGAを採用した新型車の市場投入だ。こうした新たな取り組みが利益として反映されるのは「2016年度以降になると考えている」(豊田氏)としている。
また豊田氏は「販売台数や利益といった目に見える競争力だけでなく、人材育成などの見えにくい競争力も磨いていかなくてはならない」と述べ、さらに「実践の段階に入ったといっても、チャレンジしなければ成長は止まってしまう。ゼロ打数ゼロ安打が評価されるのではなく、ヒットが打てなくてもバッターボックスに立った人が評価される会社にしていきたい。チャレンジし続ける人材を生み出していくことが重要だと考えている」と語った。
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