トヨタが過去最高益達成へ、1兆円の為替差損を吸収するカイゼンが原動力に:製造マネジメントニュース
トヨタ自動車は2014年3月期第3四半期決算を発表。2014年3月期通期業績見通しを上方修正したことにより、過去最高だった2008年3月期の営業利益2兆2703億円を超える見通しとなったことを明らかにした。
トヨタ自動車(以下、トヨタ)は2014年2月4日、2014年3月期(2013年度)第3四半期(2013年4〜12月累計)の決算を発表したが、“アベノミクス”による為替の好影響や収益構造改革の成果などにより、2014年3月期の通期業績見通しは全項目で上方修正した。その結果、通期売上高は25兆5000億円(前回見通しから5000億円増)、営業利益は2兆4000億円(同2000億円増)、当期純利益は1兆9000億円(同2300億円増)となり、過去最高益を更新する見込みとなった。
利益が2倍以上となる好決算
トヨタの2014年3月期第3四半期(2013年4〜12月累計)決算は、売上高が前年同期比17.8%増の19兆1225億円、営業利益が同126.8%増の1兆8559億円、当期純利益が同135.4%増の1兆5260億円となった。連結販売台数は、エコカー補助金が終了した日本の他、タイなどで販売が減少した一方で、景気が回復基調にある北米や中国などで販売が増加し、前年同期に対して15万6000台増となる678万5000台となった。
これらの結果から、2014年3月期の通期業績見通しを全項目で上方修正し、2008年3月期の過去最高益を更新する見込みとなった。
1兆円近い為替差損を吸収する原価改善
今回の好業績には、前年同期に対してドルで19円、ユーロで30円の円安による8000億円の増益効果が寄与している。しかし、トヨタ 常務役員の佐々木卓夫氏は「今期に関しては為替変動の影響がプラスに働いたことは事実だが、当社が求めているのは為替の動向に一喜一憂しないで済む体制作りだ。原価改善や営業努力などを地道に積み上げてきたことの効果が重要だ」と強調する。
同社では「為替に影響を受けない体制構築」を目標とし「為替が1ドル85円、販売台数750万台で1兆円の利益が出る体制」を目指して原価改善を進めてきた。ここ数年は3000億円規模の原価改善を続けており、収益性改善を続けている。現在の状況は「この目標に向けて計画ラインに乗っており、企業としての体質は大幅に強くなっている」と佐々木氏は話す。
例えば、2008年3月期時点では、為替は1ドルが114円、1ユーロが162円と、今期に比べるとさらに円安の状況だ。「この為替差を営業利益に換算した場合、1兆円前後の損失になる。この1兆円規模の為替差損を跳ね返して、過去最高を見込める状況になっていることに大きな価値がある」と佐々木氏は語る。
生産能力もカイゼンで30万台増強
業績の大幅な回復を見せたことで、今後の再投資への動きに注目が集まるが、「基本的には方針は変えていない」と佐々木氏は話す。設備投資額については今回の決算で微増させたが、これはほぼ為替変動の影響だとしている。ちなみに設備投資額のうち半分弱が国内向けの投資となっており、研究開発費は8割程度が国内向けだという。
同社では2014年1月23日に暦年ベースのグループ生産計画を公開したが、2014年は1043万台を計画する。そのうちトヨタ・レクサスブランドでは916万台を生産する予定だ(関連記事:トヨタ、2014年は過去最高となる1043万台の生産を計画――国内生産は5%減)。
ライバル企業が生産能力拡大に投資を進める中、新たな工場投資にも注目が集まっているが、トヨタでは当面の生産能力拡大をカイゼンで補うつもりだという。実際に、従来は最大生産能力を950万台としていたが、この改善活動により現在は980万台まで増やすことに成功したという。佐々木氏は「市場が求めれば新たな工場建設なども可能性としてはあるが、既存設備の改善への取り組みで当面は十分な生産能力を確保できる」と述べている。
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