IoTで生み出す“デジタルの双子”、新たに解析企業の買収なども発表:LiveWorx 2015(2/2 ページ)
米国の大手CAD/PLMベンダーであるPTCおよび同社傘下でIoTプラットフォームを展開するThingWorxは2015年5月4〜7日(現地時間)、米国マサチューセッツ州ボストンにおいてユーザーカンファレンス「LiveWorx 2015」を開催。基調講演に立ったPTC社長兼CEOのジェームズ・ヘプルマン氏は、IoTによる産業の変化を強調するとともに、新たに解析企業大手のColdLightを買収したことを明らかにした。
“デジタルの双子”による変革
「デジタルツイン」とは、IoTにより取得したデータにより、フィジカルの世界で製品に起こっていることを全て、デジタルの世界にコピーしてしまうことだ。デジタルの世界に“現実世界の双子”がいるような状況となる。これにより、各種データがフィジカルの世界でどういう動きやどういう影響を与えているのかということを、デジタルの世界で再現することができるようになる。
例えば、これにより「現実の世界で製品がどのように使用されているか」というデータを参考にしながら設計者が、次期モデルの改善に役立てたり、新製品を生み出す時の指標にしたりすることなどに利用できるという。
ヘプルマン氏は「モノの世界のライフサイクルと同じモノをデジタルの世界でも作り、それを同期させていく。フィジカルの世界をデジタルに反映させるのと同時にデジタルの世界で分析などを行った結果をフィジカルの世界に返す。デジタルとフィジカルのクローズドループを作り上げていく」と述べている。
機械学習と予測分析のColdLightを買収
これらの世界をより効果的に実現するために、さらに解析技術の強化を進める。新たに買収するのが、ビッグデータにおける機械学習や予測分析分野で先進的な技術を抱える米ColdLightだ。ColdLightは機械学習と予測分析技術である「Neuronプラットフォーム」を展開している。買収額は1億500万ドルに及ぶという。
既にPTCでは、CADやPLM、ALMなどにより製品開発面における“デジタルの世界”の統合をほぼ実現しているといえる。さらにThingWorxとAxedaにより、製品からのデータ取得と、それを活用するアプリケーション開発についてもこれに統合することが可能だ。これにColdLightの予測分析機能を加えることで、製品データを取得し有益な情報を把握し、改善や予防などのアクションにつなげることまでをほぼ自動で行えるようになる。
同社では今後ThingWorxのソリューションと、ColdLightを融合していく方針を示しているが、これによりデータから故障パターンを検出する相関関係をモデル化し、障害を予測し、対処策を想定してコストの制約に対する勧告の優先順位付けをする、というようなことが行えるという。
ColdLightの創業者でCEOであるライアン・カプラン(Ryan Caplan)氏は「ColdLightが実現する人工知能技術を使った予防分析技術『Neuron』では、取得したデータからパターン認識を行い、機械学習技術を活用して予知モデルを作ることができる。ThingWorxで取得したデータから実際にどういうリアクションをすべきかという推奨内容を示すことができる」と語っている。
フィールドサービス支援企業とも新たに提携
さらに、フィールドサービス(現場サービス)支援サービスを展開するServiceMaxとも新たに提携を発表。ServiceMaxは、機器メンテナンスなどの支援ソフトウェアでメンテナンスおよびそれに伴う人員のスケジューリングや最適配置、部品のロジスティクスの調整などを自動で行うもの。PTCとServiceMaxでは、それぞれの連携サービスなどを共同開発するとともに、それぞれの販路でお互いの製品を販売していくとしている。
PTCでは、これらの買収や提携により広がるポートフォリオを生かし、IoTにより変化する製造業に新たな価値を提供していく方針だ。ヘプルマン氏は「製品の形が大きく変化し、デジタル・フィジカルの世界が融合していく中、これらを生かした『新しい世界』を支援していく」と話している。
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