インダストリー4.0が目指す“一段上”の自動化:ハノーバーメッセ2015 リポート(前編)(3/3 ページ)
ハノーバーメッセ2015のメインテーマとなった「インダストリー4.0」。製造業にとって魅力的なビジョンである一方で、具体的な姿をどう捉えるかで多くの企業が迷いを見せているのが現状だ。本連載では、現地での取材を通じて、インダストリー4.0に関する各社の動きを3回にわたってお伝えする。
生産ラインをモジュールの組み合わせで実現
カスタム製品の自動生産とともに、これを実現する手法として注目を集めたのが、生産ラインや工程のモジュール化だ。生産工程をブロックのように組み合わせるだけで求める生産ラインを構築できる姿を実現した。
ドイツのSAPとFestoは「Transfer Factory」として、SAPのERPからの製造指示で、1個ごとに自動で異なる作業で生産を行うデモを行った。同製造ラインでは複数の部品の組み立て指示から実際の組み立てとその実績情報の収集までを行うことができる。そのため、生産ラインの担当者は定型的な作業の多くを機械に自動で任せることができるようになるという。また同生産ラインは作業工程ごとにモジュール化されており、これらの工程を組み合わせることで、工程を変更することが可能であることも特徴だ。
より短時間で生産ラインを構築できる他、ラインの組み替え作業なども大きく低減することが可能となる。
インダストリー4.0プロジェクトにおける技術イニシアチブ「スマートファクトリーKL」は異なる企業のモジュール化した生産工程を組み合わせて1つのラインを構築するデモを展示した(関連記事:ドイツ製造業の危機感が生んだインダストリー4.0、日本はどうすべきか?)。
同ブースでは、ドイツのフエニックス・コンタクトやハーティング、Festo、Rexroth、PILZ、LAPP KABELなどのそれぞれの生産工程モジュールを組み合わせ、1つの生産ラインとしたもの。生産工程をモジュールとし、さらに異なる企業同士が同じインタフェースで接続できるようにすれば、生産ライン構築における自由度は大きく高まることになる。従来は物理面でも情報面でも規格化ができておらず、これらを組み合わせるには専門知識のあるシステムインテグレーターが必要となっていたしかし、スマートファクトリーKLでは、連携できるインタフェースを整備することで、組み合わせるだけで求める生産ラインを実現することが可能である点を実証した。
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前編では、インダストリー4.0が目指すマスカスタマイゼーションに向け、一段と進む「自動化」の動きについて紹介した。中編では、この自動化の一方で多くの出展があった「人と機械の協調」についての動きについて紹介する。
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