激論! クルマとインターネット「つながらなければ未来はない?」:林信行×夏野剛×久夛良木健(3/3 ページ)
「第6回 国際通信自動車技術展」で、林信行氏、夏野剛氏、久夛良木健氏の3氏によるトークセッション「オープンイノベーションがもたらす地殻変動を読み解く!」が開催された。インターネットの普及により、変わりつつある自動車業界。その現状と未来についてさまざまな意見が飛び出した同セッションの内容をお届けする。
もうクルマはiPadを使うことを前提に作ってもいい?
夏野氏 テスラを買ってから、既に何回か車載OSのアップデートがあったんだけど、それで機能が増えるのがすごく面白い(関連記事:「モデルS」がアップデート、充電が必要になれば充電器に自動で経路案内)。こないだのアップデートでは、オートクルーズ機能が追従型に進化したんですよ。でも、アップデートには1時間40分も掛かったから、くれぐれもこれから購入される方は夜中に更新するようにしたほうがいいです(笑)。
久夛良木氏 全部ソフトウェアのアップデートで対応できるっていうのはすごい。日本のメーカーもやれるけど、いまいち明快になっていないんですよね。
林氏 テスラのやっていることって、日本の電気自動車でもできるんじゃないかっていう部分がたくさんありますよね。
夏野氏 そうなんですよね。僕がテスラに感動しているのって、電気自動車としての機能の部分じゃなくて、ユーザーインタフェースの部分なんですよ。日本の方にこのことを話すと、「特殊なクルマですから」みたいな意見が返ってくる。しかもそういう人に限って、テスラに乗ったことがなかったりするんです。これはまずいんじゃないかなと。
久夛良木氏 今って家の中に限らず色んなものがインターネットにつながってますよね。それに慣れているから、クルマの中でも同じようにできないと「あれ、どうしてできないんだ」っていう気持ちが大きくなってくる。日本のメーカーって、車載情報機器を数年のサイクルで作ってますけど、今後その開発速度で対応できるのだろうかと疑問に思います。AppleやGoogleがサポートしてくれるかっていうと、そこまではあやしい感じがするし。じゃあ自動車メーカーが自分たちで新しいものを開発するぞってなるような仕組みがあるのかは気になりますね。
夏野氏 もうクルマはiPadを使うことを前提に作ってもいいんじゃないかなと。今のクルマのカーナビって、中途半端なサイズだしタッチパネルでできることも少ない。解像度も低いですよね。プリウスの燃費フローのモニターなんかすごく小さいし、未来感ゼロ。
久夛良木氏 制御系の情報に関しては、コントロールユニットからデータを吸い取るだけなら可能ですよね。BluetoothとCANのネットワークポートを使って情報を端末に転送すればいい。さらにSIMカードがあれば、とんでもなく未来的なテレマティクスサービスをあなたのクルマに取り付けられますみたいなことができると思うんだけど、誰もそれをやらない。テスラにしてもITに関してはど素人です。他の誰かがもっと良いものを作れるチャンスはあると思うんだけど。
夏野氏 散々テスラを褒めましたけど、駄目な部分もたくさんある。日本の自動車メーカーはそのあたりを細かく研究して、良い部分だけを持ってくればいいんじゃないかなと。昔のユーザーがとか、今まではこうだったとかみたいな話は必ず出てくるけど、今って電気自動車や燃料電池車が出てきていろいろな変化が起こっている時代だと思う。その中で日本の自動車メーカーは最先端を行って欲しいなと思いますね。日本の企業は横並びなので、1社が始めればみんなやるんじゃないかと。技術的には可能なわけだし、それは応援したいですね。
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