激論! クルマとインターネット「つながらなければ未来はない?」:林信行×夏野剛×久夛良木健(2/3 ページ)
「第6回 国際通信自動車技術展」で、林信行氏、夏野剛氏、久夛良木健氏の3氏によるトークセッション「オープンイノベーションがもたらす地殻変動を読み解く!」が開催された。インターネットの普及により、変わりつつある自動車業界。その現状と未来についてさまざまな意見が飛び出した同セッションの内容をお届けする。
人とクルマの付き合い方はどうかわる?
林氏 スマートフォンの普及でいろいろ変化がありましたが、クルマと人の付き合い方ってどう進化するべきだと思いますか?
久夛良木氏 やっぱり運転を楽しむ“Fun to Drive(ファントゥドライブ)”な人と、単純に移動手段としてクルマを捉える人の2つに分かれていきますよね。最近ドライブがしたいからクルマを買うっていう人って少ないんじゃないかなと。
夏野氏 よくB2Cのビジネスをやっていると、ユーザーのお財布の取り合いみたいな話をする人が多いんですね。「携帯の支払いが増えたから若者が飲みにいかなくなった、クルマを買わなくなった」みたいな。でもそうじゃなくて、今は“時間の取り合い”なのではないかなと思ってますね。
クルマでドライブに行くのか、スマホでソーシャルゲームをやるのかのどっちがいいかっていったら後者を選ぶ人が多いでしょう。ゲームとか安心安全でコストパフォーマンスが良いものに魅力でクルマが負けている。だからもっとエンターテイメント性だったり、趣味性の高いものを特に値段が高いクルマには入れていかないといけないんじゃないかなと。今後の自動車市場は、尖ったクルマとコストパフォーマンスがいいクルマというように2極化していくのかなと思います。
久夛良木氏 欧州のクルマって個性が強くて、運転していても楽しい。一般論だけど、日本のクルマってみんな同じようになっていってますよね。乗り味もマイルドで、快適性が高いみたいな。ある意味、“動く個室”というかね。都会で乗ってると、その個室も大きくなりすぎてきた気がするし、田舎だったら軽自動車の方が取り回しがいい。そうなると中途半端なクルマっていらないよねって話になってくる。
林氏 クルマに乗った時のエンターテイメント性だったり、個性を強くしていけば良いのでしょうか?
夏野氏 クルマに乗る機会って、子どもがいると増えるんですよね。じゃあワンボックスを買おうかと思っていろいろ見ても、子どもと一緒にのってかっこいいクルマっていうのが少ない。そこで出会ったのがモデルSだったんですよね。あのインタフェースは、一緒に試乗した私の奥さんと子どもの心をわしづかみにしましたよ。これも1つの個性、尖り方ですよね。
こういう話を日本の自動車メーカーの方に話すと、「モデルSみたいな大きなディスプレイは、海外メーカーだから実現できる。日本だと規制が……」みたいなことを言われる。クルマはやっぱり安全性を考えなくてはいけないからそうなのかもしれないけど、どこか基本的に諦めてしまっているんじゃないかなと。警察は運転中のドライバーに一切ナビを操作させたくないみたいですが、クルマのユーザーインタフェースと安全性に関するバランスって考え直さなくてはいけないタイミングだと思う。
林氏 その辺りの課題と、今回のテーマであるオープンイノベーションの関係はどうでしょう?
夏野氏 いきなりオープンイノベーションというと、じゃあ誰が責任をとるんだって話になってしまう。じゃあオープンイノベーションを取り入れながら、どうやってやっていくのか。完全にオープンではないけど、市場のイノベーションの活力をうまくとりいれていかないとどんどんつまらなくなってしまうんじゃないかなと。
久夛良木氏 テスラが出てきて議論が1歩前進したと思うんですよ。クルマってノウハウとかすり合わせ技術の集合体だから異業種は参入不可能って思われてたけど、テスラがそれを打ち壊した。実際に乗ってみると、ここまで来たのかって思いましたね。今まで日本はクルマのあらゆる部分を全て自分たちで作っていた。でもボディ、動力部分、情報系、制御系って分けて考えていけばいいのではないかなと。
でも、こういう議論の際に制御系と情報系が一緒にされてしまっているのは良くない。それは全く別に進化していくと思う。なぜなら制御系というのは、絶対にミスがあってはならないし、外部からハッキングされてはいけない部分でしょ。でも情報系はどんどん外部とつながっていかなくてはならない。日本のメーカーはその辺りを垂直統合しようとしている。じゃあオープンイノベーションだってなると、「ハックされたらどうするんだ」みたいな話になって、すぐに制御系と情報系の議論がごっちゃになってしまう。日本の自動車メーカーはその辺りを一度リセットして、分けて考えていく必要があると思う。
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