アイシン精機はなぜイノベーションに注力するのか:モノづくり最前線レポート(3/3 ページ)
アイシン精機は2015年1月に新たにイノベーションセンターを設置し、既存の事業領域にとらわれない新たな事業の柱を生み出す取り組みを強化する方針を示す。なぜ、アイシン精機は新たな事業を創出しなければならないのか。その第一弾プロトタイプ発表の会場で、同社イノベーションセンター長で常務役員の江口勝彦氏に話を聞いた。
既に3つのプロジェクトが進行中
MONOist 既存領域に対する危機感は高まっているということでしょうか。
江口氏 新興国メーカーの成長や競合関係の変化、技術領域の変化などを考えれば、既存領域の価値は当然下がっていく。また国内の自動車販売台数なども長期的に見れば下がることは避けられない。その中で、グローバル競争をしていく時に、同じ価値しか提供できなくなれば、より固定費の低い企業が勝つのは当然のことだ。そのためわれわれとしては新しい価値を常に模索し、提供し続けていかなければならない。さまざまなトレンドを見つつ、新たな価値がどこにあるのかを見極めていく必要がある。
MONOist イノベーションセンターに定められた数値的な目標というのはあるのでしょうか。
江口氏 特に定量的な目標というのは決まってはいないが「早期の事業化」については要求されている。個人的には「ニーズがある」と考えてプロトタイプを世に問うてから5年以内には事業としての道筋を立てなければならないと考えているので、それを目標に取り組む。今回発表したパーソナルモビリティについても、ユーザーニーズがどこにあるのかというのを把握しつつ、モノとしての中身を磨き上げ、5年以内の事業化を目指したい。
MONOist このパーソナルモビリティ以外にも進んでいるプロジェクトというのはあるのでしょうか。
江口氏 既にプロトタイプとして形になりそうなモノが3つくらいある。どこに絞り込んでいくかというのをアンテナを張りながら作り込んでいく。これらの形になりつつあるプロジェクトについても「5年」を目標に事業化を目指していく。
MONOist オープンイノベーションで社外の力を使う取り組みについてはどのような形で進めているのでしょうか。
江口氏 大学や研究所、デザイナーやクリエーターなどをコンセプトの初期段階から呼び込んで進めていく。これらのビジネスマッチングやテクノロジーマッチングなどのワークショップをサポートする企業などもあり、これらの企業に支援を求めながら、最適な形を模索している。
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イノベーションを生む方法論とは?
グローバル化により変化と競争が激化する中、製造業には自ら新しい価値を生み出すイノベーションを持続的に生み出すことが求められています。既存の価値観を破壊する「イノベーション」を組織として生み出すにはどうすればいいのでしょうか。「イノベーションのレシピ」特集では、成功企業や識者による事例を紹介しています。併せてご覧ください。
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