自動運転の最大の課題は「人とクルマの関係性」:自動運転技術(3/3 ページ)
自動車技術会が開催したイベントで、日産自動車 電子技術開発本部 IT&ITS開発部 ITS開発グループ シニアスタッフの赤津洋介氏が「Active Safety Systemの現状と未来」をテーマに、先進運転支援システムや今後の自動運転システム開発の方向性について語った。
システムとドライバーの責任分担が課題に
赤津氏は、ADAS開発に必要な技術について「制御技術やセンサー技術はもちろんだが、今後はさらに認知科学やヒューマンファクターに関する研究も必須となる。特にこうした領域は、自動運転システムの開発が進む中で、さらに重要度が増していくだろう」と説明した。その背景には、自動運転システムの発展により、走行時におけるシステムと人間の役割分担が曖昧になることが予想されているという問題がある。
赤津氏は自動運転システムに関する今後の技術開発の方向性について、「自動運転システムが発展すれば、人間は運転中にスマートフォンを操作したり、寝ることだって考えられる。つまり、人間とシステムの運転に対する責任の境界が曖昧になっていく。システムが制御の限界を通知した際に、ドライバーのさまざまな認知状態や精神状態に合わせてどう対応して安全を確保するのかを考えていく必要がある」と語り、続けて「アダプティブクルーズコントロール(ACC)やレーンキープなど、自動運転システムに関する前後/横方向の制御技術開発は、ほぼ飽和状態に達している。今後は人間とシステムの関係の課題を解決する技術開発が競争領域となっていくだろう」と説明した。
さらに同氏は、自動運転システム開発における国際動向についても言及し、「欧州メーカーが一歩リードしている状況。自動レーンチェンジなどさまざまな技術の実証実験を、日本より前倒しで進めている。今後は日米欧の自動運転システムの開発競争がさらに激化していくだろう」と語った。
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