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“音”を“ワイン”に持ち替えて、ケンウッド出身者がワインセラーに懸ける夢小型ワインセラー市場を開拓(3/3 ページ)

多くのモノづくりベンチャーは「自分が欲しいモノ、好きなモノを作る」ということで新たな製品を生み出し、市場を切り開いてきた。しかし、マーケティングによって市場の存在を明確にした上でそこに挑戦して成功したモノづくりベンチャーがある。国内で小型ワインセラー市場を切り開いたデバイスタイルホールディングスだ。

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モノづくりでの苦労

 「とにかく設置面積を小さくする」という目標に向けた取り組みの中で、苦労したのが「断熱効果を維持しつつ壁面の薄型化を図る」という点と「転倒しないようにする」という点だ。

 ワインセラーはとにかく温度を一定に保つということが求められる製品だ。そのため壁面の断熱効果は非常に重要になる。コンパクトな形状を維持したまま、使用する断熱材の量、コストのバランスを取りつつ、求める断熱効果を得るためにはさまざまな試行錯誤が必要だったという。「薄型化と断熱効果を考えた場合、真空断熱素材などを使用すれば実現可能だがコストが折り合わない。さまざまな要素を見据えつつさまざまな素材を試したが、最終的にはシクロペンタンを使うことで落ち着いた」と宇賀氏は述べる。

 一方、高さを高くし、設置面積を小さくすると転倒しやすくなってしまう。そこで従来の設計から重心を移動させるための再設計を行うなど、試行錯誤をして、転倒防止角度を確保することができたという。同社では設立当初は自社内で製品企画や仕様のまとめを行い、国内の設計企業に設計を外注し、中国で生産するという方法を取っていたが、現在は設計から生産まで全て中国の協力企業で行うようになっている。しかし、仕様決定やシミュレーションなどを国内で行う体制は確保しており、CD-7についても「重心移動の設計変更については国内で行い中国側にデータを送った」(宇賀氏)としている。

 デバイスタイルホールディングスは、フロントランナー(前身は日本ポラロイド)などをグループに含むフロンティアーズから2013年12月に出資を受け、同グループでの展開を行っている。具体的には、デバイスタイルホールディングスは製品企画や開発に専念し、販売については豊富な販路を持つフロントランナーが受け持つ体制となっている。

 宇賀氏は「販売のバックアップも得られるようになり体制は整ってきた。ワインの消費量を見ても、まだまだワインセラー市場は伸ばせる余地があると考えている。今後もさらに潜在的なニーズを掘り起こすことができる製品を投入していくことが重要だ」と語っている。

モノづくりベンチャーのアプローチ

 デバイスタイルホールディングスは製品開発において特別な技術を用いたわけではない。しかし、潜在的な市場のニーズをくみ取り、そこに最適な製品を投入したことで、ほとんど存在しなかった市場を活性化することに成功した。

 大手製造業はその体制を維持するための費用が大きく掛かるため、製品投入を行う際にはより多くの市場規模や販売規模が必要になる。しかし、これらの大きな市場ばかりを狙った製品では満足できないユーザーが増えてきており、大企業がアプローチできない隠れたニーズは、あちこちに存在する。デバイスタイルホールディングスの取り組みはその1つのニーズを狙ったものだといえる。

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