IoTとの組み合わせで注目を集めるサービスビジネス――PTCが戦略を発表:製造ITニュース
IoT(モノのインターネット)の発展で大きな注目を集めているのが、製造業のサービスビジネスの変化だ。PTCジャパンは、以前から取り組むSLM(サービスライフサイクル管理)システムに、注力を進めるIoT(モノのインターネット)関連サービスを組み合わせた提案を強化し、2018年度までにSLMビジネスの売上高比率を現在の10%から20%に引き上げる方針を示している。
米PTCおよびPTCジャパンは2015年2月26日、都内でSLM(サービスライフサイクル管理)ソリューションに関連する戦略説明会を開催。IoT(モノのインターネット)の進展により変革が進むサービスビジネスによって何がもたらされているのかという点とともに、この動きに対してPTCが用意するソリューションを紹介した。
サービスビジネスを取り巻く環境は変化が進んでいる。PTC SLMセグメント シニアバイスプレジデントのスティーブ・モランディ(Steve Morandi)氏は「サービス部門は新たな課題に直面している。機器稼働率や所有コストの保証を要求するようにサービスへの期待値が高まっている他、サービスそのものの複雑化が進んでいる。さらにサービスプロセスの自動化を実現するサービス変革なども求められている。IoTにより業務運用やサービス戦略の変革が可能になり、製造業でもモノを売るだけでなくサービスで収益を生み出そうとする動きが広がっている」と述べる。
また、一方で製造業が作る製品もネットワークに接続する機器(スマートコネクテッドプロダクツ)となり、製造業において「事業運営効率化」と「製品の戦略的差別化」の領域でサービス化が進んでいくと見られている。
モランディ氏は「事業運営の効率化の面では従来は受け身の対応だったり、現地対応が必要だったりしたことが、遠隔対応で定期的に対応できるようになる。また自社のビジネス面では製品をサービスとして提供でき、パフォーマンスベース契約など新たなビジネスモデルを創出可能だ」と語る。
製造業のサービスビジネス改革を支援
PTCでは、2012年に米サービジスティクス(Servigistics)を買収し、SLM(サービスライフサイクルマネジメント)事業への本格的な取り組みを開始。PLMシステムによる製品情報管理とともに、サービス部品のライフサイクル管理のメリットについて提案を行ってきた(関連記事:サービス部門をプロフィットセンターへ――サービスは利益を生み出す宝の山)。一方で2013年12月にThingWorxの買収を発表しIoT関連ソリューションへの取り組みを本格化させた。
さらに同社ではM&Aを通じて、ポートフォリオの拡充を図っており、これらを組み合わせることで、製造業のサービスビジネス改革を推進する方針だ。
PTCでは、以前からコールセンター業務やクレーム処理、パーツ管理などのライフサイクルを管理するサービスライフサイクル管理(SLM)を提案。PLMで管理する設計情報とSLMのサービス情報を連携させることで、フィールドサービスやコールセンター対応などの作業負担を軽減する一方、サービスで得られた情報を設計側に自動でフィードバックし不具合の未然防止などを実現できることを訴えていた。これらに対し、新たにThingWorxやAxedaのIoT関連ソリューションを加えることで、ユーザーが製品を利用している期間の情報も取得できるようになる。
これらの取り組みにより、PTCジャパンではSLM関連製品群の販売拡大を推進。「PTCジャパンの売上高のうち、SLM関連の売上高は現在10%程度だが、2018年までには20%にしたい。売上高は毎年30%成長を狙う。導入企業は現在の30社から100社に引き上げる」とPTCジャパン 代表取締役社長 桑原宏昭氏は語る。また、販売については「現在はSLMの専門チームと産業別の営業グループとで販売しているが、インダストリー4.0をはじめとするスマートマニュファクチャリングとしてのアプローチと、経営の全体戦略としてのアプローチの2方向から提案を進めていく」(桑原氏)としている。
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