「Cortex-R5」コアが機能安全対応を拡充、ISO26262への準拠が容易に:ISO26262
ARMは、リアルタイム処理用プロセッサコア「Cortex-R5」に対応する包括的なセーフティパッケージを発表。同パッケージにより、自動車向け機能安全規格であるISO 26262への準拠が容易になる。併せて、機能安全規格に準拠したソフトウェア開発に最適なCortex-R5用コンパイラを、Green Hills Softwareと共同開発した。
ARMは2015年1月22日(欧州時間)、リアルタイム処理用プロセッサコア「Cortex-R5」に対応する包括的なセーフティパッケージを発表した。このセーフティパッケージによって、Cortex-R5を搭載したICを用いて製品開発をする場合に、自動車向けのISO 26262や一般産業機器向けのIEC 61508といった機能安全規格への準拠が容易になる。
ARMが提供するプロセッサコアにセーフティパッケージが付属するのは今回が初めて。今後は、Cortex-R5以外の他のプロセッサも同様なサポートを行っていく予定である。
Cortex-R5は、Spasion(スパンション)の「Traveo」やTexas Instrumentsの「Hercules」といった車載マイコンに採用されている。Traveoはモーター制御やデジタルクラスタ、Herculesはブレーキ系などの足回りシステム向けに展開しており、ISO 26262への準拠をより容易に行える環境が求められていた。
さらにARMは2015年2月16日(欧州時間)、Green Hills Software(GHS)と、Cortex-R5に最適化したコンパイラを共同開発したと発表した。同コンパイラの最新バージョン(2015.1)とスパンションのTraveoを用いてEEMBC(Embedded Microprocessor Benchmark Consortium)のベンチマークを行ったところ、そのスコアは1.01 EEMBC Automarks/MHzとなった。これはこれまでのCortex-R5を用いたスコアと比較して30%の向上になるという。
GHSのツールチェーンは、第三者機関であるTUV NordとExidaから、ISO 26262のASIL D、IEC 61508のSIL 4を満たすソフトウェア開発に利用可能という認証を受けている。ここでいうASIL DとSIL 4は、それぞれの機能安全規格で最高の安全要求レベルのことだ。
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