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ARMが挑む最後のフロンティア、車載マイコン市場は攻略できるのか車載半導体(1/2 ページ)

スマートフォンやタブレット端末向けプロセッサ製品のアーキテクチャでほぼ独占的なシェアを築くとともに、汎用マイコンでも勢いを見せつけるARM。そのARMにとって最後のフロンティアと言えるのが、自動車の制御系システムに用いる車載マイコンである。

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ARMコアを搭載する車載マイコン群

 市場拡大が続くスマートフォンやタブレット端末。そのアプリケーション処理を担うプロセッサコアとして広く採用されているのが、ARMアーキテクチャである。QualcommがARMアーキテクチャを基に開発した「Snapdragon」であれ、ARMが提供している「Cortex-Aシリーズ」であれ、ほとんどのスマートフォンやタブレット端末がARMアーキテクチャを用いたプロセッサ製品を搭載していると言っても過言ではない。

 スマートフォンやタブレット端末と同様に高度化が進む、カーナビゲーションシステムに代表される車載情報機器でも、プロセッサコアは「Cortex-A9」をはじめとするARMコアの独壇場となっている(関連記事1)。

車載情報機器に広く採用されているARMコア
車載情報機器のARMコアの採用事例(クリックで拡大) 出典:アーム

 これらスマートフォン、タブレット端末、車載情報機器市場では、Intelが「Atomシリーズ」で対抗しているものの、現時点では採用事例はそれほど多くない(関連記事2)。

汎用マイコンでも勢い

 動作周波数が1GHz以上に達するスマートフォン向けのプロセッサ製品に対して、数k〜数十MHz、高くても200MHz程度の範囲に動作周波数が収まるのがマイコン(マイクロコントローラ)である。PCやサーバ――最近ではスマートフォンやタブレット端末も――を除く、リアルタイム性を重視される組み込み機器はマイコンによって制御されている。

 このマイコンのプロセッサコアでもARMの存在感は高まっている。Cortex-Aシリーズと同じ「ARMv7アーキテクチャ」に属する、マイコン向けプロセッサコア「Cortex-Mシリーズ」を搭載するマイコンの出荷量が増えているのだ。民生用機器や産業用機器などに用いられる汎用マイコン市場では、Texas Instruments(TI)、STMicroelectronics、NXP Semiconductors、Freescale Semiconductor(フリースケール)、富士通セミコンダクター、東芝などが、「Cortex-M0/M0+」、「Cortex-M3」、「Cortex-M4」などを搭載するマイコン製品の展開を拡大。独自コアを展開するルネサス エレクトロニクスやMicrochipを急追している。

32ビットマイコン市場と同期してARMマイコンのシェアも拡大
32ビットマイコン市場と同期してARMマイコンのシェアも拡大(クリックで拡大) 出典:アーム

 ARMのマイコン向けプロセッサコアは、全てのコアが32ビットであること、命令セットの互換性、開発ツールやソフトウェアの高い再利用性などに強みがある。例えば、ある製品ファミリを開発する際に、ハイエンドの品種にCortex-M3マイコンを、機能を絞り込んだ品種にCortex-M0マイコンを搭載するとして、それぞれの品種で基本的なソフトウェアを共用できるのである。

車載マイコンの攻略へ

 マイコン市場は、汎用マイコンと、自動車の走る・曲がる・止まるをつかさどる制御系システム向けの車載マイコンに分けられることが多い。マイコン市場全体のうち、車載マイコンが約39%を占めており、用途別ではトップという報告もある。

 アプリケーションプロセッサ、汎用マイコンで勢いを見せつけるARMだが、この車載マイコンではそれほどの存在感を得られていない。車載マイコンでトップ3のルネサス、フリースケール、Infineon Technologies(インフィニオン)は、それぞれ独自コアを搭載した製品を展開している。フリースケールとインフィニオンは、汎用マイコンではARMコアを採用しているものの、車載マイコンはこれまでも自動車メーカーやティア1サプライヤからの信頼を勝ち取ってきた独自コアを搭載する方針を変えていない。

 ARMにとって最後のフロンティアともいえる車載マイコン市場(PCとサーバもそうかもしれない)だが、採用拡大に向けた準備を着々と進めているようだ。ARMの日本法人アームでマーケティング&ビジネスデベロップメント エンベデッド・セグメントのマネージャーを務める新井相俊氏は、「既に、ABS(アンチロックブレーキシステム)などのEBS(電子制御ブレーキシステム)とエアバッグには、ARMコア搭載する車載マイコンが広く利用されている」と語る。実際に、EBSとエアバッグは、TIの製品を中心にARMコアマイコンが採用されており、シェアはEBSで60%以上、エアバッグで約40%を占めるという。

車載システムに採用されているARMコアマイコン
車載システムに採用されているARMコアマイコン(クリックで拡大) 出典:アーム

 新井氏は、「こういった自動車の安全と関わる分野で普及している以上、他のシステムでARMコアの車載マイコンを搭載するポテンシャルは十二分にある。Cortex-Mシリーズや、リアルタイム性と処理能力を両立させた『Cortex-Rシリーズ』などを搭載する車載マイコンは続々と製品化されている。ただし、自動車業界の新車開発のサイクルが3〜5年と長いことや、量産規模やサポート体制などで顧客からの信頼を得るまでに時間がかかることもあり、現時点でのシェアが高くないだけだ」と強調する。

 実際に、EBSやエアバッグ向けの車載マイコンのプロセッサコアは以前からある「ARM7」だったが、徐々に「Cortex-M3」や「Cortex-R4/5」を搭載する車載マイコンへの移行が始まっている。

 この他では、東芝も「Cortex-M3」や「Cortex-R4」などを搭載するマイコンで車載分野に再参入して、モーター制御やバッテリーモニターなどの用途を中心に製品展開を進めている。

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