カーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)に代表される車載情報機器向けのICにおいて、英ARM社のアプリケーション処理用プロセッサコア「Cortex-A9」を搭載する製品の発表が相次いでいる。自社開発の「SH-4A」コアを搭載する製品によって車載情報機器向けICでトップシェアを獲得しているルネサス エレクトロニクスをはじめ、米Freescale Semiconductor社、米NVIDIA社、東芝、富士通セミコンダクターなどが、Cortex-A9を搭載する新製品を発表している。さらには、FPGAベンダーである米Xilinx社が、Cortex-A9の搭載に加え、周辺機能をFPGAのようにプログラムできることを特徴とするIC 「Zynq-7000ファミリ」を車載情報機器向けに投入した。
ルネサスの「R-Car」
表1に示したのは、各社が発表しているCortex-A9搭載製品の名称、搭載コア数、動作周波数、出荷時期、主な特徴をまとめたものである。
ルネサスが2011年2月に発表した「R-Car M1A」は、車載情報機器向けSoC(System on Chip)ブランド「R-Car」の第1弾製品である。
R-Car M1Aは、プロセッサコアとしてCortex-A9を1個とSH-4Aを1個搭載する。Cortex-A9は、ユーザー側で開発したアプリケーションソフトウエアなどを動作させるメインのプロセッサコアとして用いる。一方のSH-4Aは、現時点における同社の高いシェアの基盤となっている旧ルネサス テクノロジの「SH-Naviシリーズ」などでメインプロセッサとして用いていたものだ。R-Car M1Aにおいて、SH-4Aは、映像/音声関連などリアルタイム性が求められる処理を行うサブプロセッサとして位置づけられている。
これまで、車載情報機器市場の中核だった車両組み込み型のカーナビには、組み込みOSとして米Microsoft社の「Windows Automotive」が広く用いられていた。しかし、今後は、スマートホンやタブレット端末などの携帯型機器市場と車載情報機器市場が融合していくと見られている。ルネサスは、「『Android』などのLinux系プラットフォームが車載情報機器に利用されることも多くなるだろう。メインプロセッサとしてCortex-A9を採用することにより、これらLinux系の組み込みOSを用いたプラットフォームにも対応できるようになった」としている。また、競合他社との差異化のポイントについては、マルチメディア処理に対応するための専用回路を備えていることや、R-Car専用の電源ICを提供する方法によって消費電力を低減できることを挙げている。
車両組み込み型の車載情報機器向けIC市場において、ルネサス製品のシェアは、2010年時点で国内が97%、海外が57%となっている。これらの数字のほとんどは、既存品であるSH-Naviシリーズによるものだ。今後は、Cortex-A9を搭載するR-Carのシリーズ展開を加速することにより、 2013年には国内の97%を維持しつつ、海外は65%にまでシェアを伸ばす方針だ。
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