製造現場での普及を2倍に、ロボット新戦略が目指すロボットと共に働く未来:産業用ロボット(3/3 ページ)
日本政府が主催する「ロボット革命実現会議」は、ロボット活用の技術的および規制面でのロードマップを示した「ロボット新戦略」を発表した。本稿では、この新戦略の中で示されている「モノづくり」分野への取り組みにフォーカスし、その内容を紹介する。
2020年に実現する普及目標は
これらの取り組みを推進することで2020年に目指すべき目標数値(KPI)として、製造分野で使用されるロボットの市場規模を2倍に拡大(6000億円から1.2兆円)させるとともに、製造業の労働生産性の伸び率を年間2%を上回るよう向上させることを目指す。また、分野別の取り組みとして、組み立てプロセスにおけるロボット化率を大企業で25%、中小企業で10%を実現する。
また、双腕多能工ロボットの活用など合理的に設計された人・ロボット協調ラインの構築、機器間連携やネットワークロボットを活用した生産ラインの構築など、これまでにないロボットの活用事例を、先進的なベストプラクティスとして、今後5年間、毎年30例程度を収集、公表することを目指す。
さらに、これからの多様なユーザーニーズに柔軟に対応するためのキーとなるSIヤーについて、ロボット市場規模の拡大を上回る形でSIヤー市場を拡大させることを目指す。柔軟なシステム設計の前提となる、標準モジュール化されたハードウェア・ソフトウェアや共通基盤に関連して、共通のロボットOSなどを搭載した相互運用可能なハードウェア製品を1000製品以上開発し、市場投入されることを目指す。
規制・改革などの環境整備も
これらの、ロボット活用を推進させるために、規制・改革などの環境整備についても、ロボットが効果的に活用されるよう取り組みを推進する。
既に実現した具体的な取り組みとしては、産業用ロボットの協同作業の安全基準の明確化がある。人間との協調作業が可能な産業用ロボットについて、国際的には出力値にかかわらず、安全性を確保する対策がなされていれば、人間との協調は可能である一方、日本においては、最大出力が80W以上の産業用ロボットは、原則として柵などで囲う必要があった。
しかし、「規制改革実施計画」(2013年6月閣議決定)に基づき、2013年12月に協同作業が可能となる安全基準を明確化することで、最大出力が80Wを超えるロボットについても、条件を満たすことで、柵で囲うことなく人との協調作業が可能となった(関連記事:“一緒に働く”ロボットは安全の緑!? ファナックが人間協調ロボットを出展)。
ロボット新戦略では「安全性についてはしっかり留意しつつも、必要な規制・制度改革を不断なく進めていくことが重要である」と示している。
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