全高1835mmの軽自動車「ウェイク」がカーブで転倒しない理由:車両デザイン(3/3 ページ)
ダイハツ工業の新型軽自動車「ウェイク」の最大の特徴は、乗用の軽自動車としては極めて高い、1835mmという全高にある。しかしその全高は、走行安定性にはマイナスに働いてしまう。同社は、ウェイクを商品化するために、走行安定性を向上するための開発に取り組んだ。
「タント」より85mm高くても重心は10mmアップに抑える
3つ目は、より低い位置に重心を置くことだ。どれだけ高さが高いものでも、接地部に重量が偏って重心が低くなれば倒れにくくなる。ウェイクは、同社のスーパーハイトワゴンタイプの軽自動車であるタントよりも全高が85mm高い。もしタントと同様の設計を行うと、その分だけ全高が高くなって転倒しやすくなってしまう。
そこで、車両の上側にある部品を軽量化する一方で、車両の下側に重量物を設置するという方向性で重心を下げることにした。まず天井部に使う金属製のルーフパネルの板厚を薄くした。車両外板には、金属よりも軽量の樹脂部品を採用した。一方、荷室下部にアンダートランクを設定するとともに、パンク修理キットを車室床下に配置し、重量物が車両下部に来るようにした。これらの工夫により、タントと比べて重心の高さは10mm高くなるだけで済ますことができたという。
これらの取り組みの中で、ダイハツ工業が競合他社よりも先行しているのが樹脂外板の採用だろう。2013年10月にタントをフルモデルチェンジした際には、スポイラー一体バックドアや、フード、フロントフェンダー、フューエルリッド、レールカバーなどの外板を樹脂部品に置き換えて、約10kgの軽量化を実現している。また、軽スポーツカー「コペン」では、樹脂外板をスマートフォンカバーのように着せ替えられる「DRESS-FORMATION」というコンセプトを提案している。「競合他社に先駆けて全高が1800mm以上の乗用軽自動車を実現できたのは、樹脂外板の積極的な採用が理由の1つになるだろう」(同社)という。
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