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ドイツ製造業の危機感が生んだインダストリー4.0、日本はどうすべきか?FAインタビュー(3/3 ページ)

ドイツ貿易・投資振興機関は今回で10回目となる「日独産業フォーラム 2014」を開催。今回はテーマを「インダストリー4.0」とし、同分野の研究の第一人者と見られインダストリー4.0プロジェクトにおける技術イニシアチブ「スマートファクトリーKL」の会長を務めるデトレフ・チュールケ氏が基調講演に登壇した。同氏の基調講演の内容とインタビューをお伝えする。

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日本とドイツは同じ課題を抱えている

 ここからは記者を招いて行われたプレスミーティングの中でのチュールケ氏への一問一答の内容をお伝えしよう。

―― ドイツが日本および日本企業に期待するものとはどういうことなのでしょうか。

チュールケ氏 生産技術や生産の自動化について、ドイツと日本は切磋琢磨し同等のレベルで過去数十年競い合ってきた。しかし、自動化は今新しい局面に入ろうとしている。インダストリー4.0というビジョンはドイツの発明だが、われわれはこのビジョンやコンセプトを世界に広げたいと考えている。生産に関するパラダイムを変えたいというのが狙いだ。

 その根本的な目的としてドイツの製造業の世界的な競争力の維持というところがある。製品ライフサイクルの短縮化により、人手による生産の優位性が高まり、結果として製造立国としての中国の圧力が高まっている。高度な生産技術力のある国がさらなる高度自動化技術を開発し、人の柔軟性と対等に張り合える自動化を実現できれば、人件費を要件として考える生産のパラダイムを変えることができる。またエネルギー面で考えても、ドイツは資源が乏しい。生産効率化とともにエネルギー使用量の削減を実現することは非常に重要だ。

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「ドイツと日本は同じ境遇にあり、協力できることがあるはずだ」と語るチュールケ氏

 この話はドイツと同様の歩みを示してきた日本でも同じことがいえる。ドイツも日本も製造立国でありながら、資源が少なく、少子高齢化に悩み、労働人口の減少に悩んでいる。インダストリー4.0で示す生産効率化を実現することは、日本にとっても価値があるはずだ。

 インダストリー4.0プロジェクトおよび各ワーキンググループそのものはオープンなものなので、日本企業でも参加できる。ともに生産技術で切磋琢磨してきたドイツと日本で、新たな前進を生み出していけたらいいと考えている。

―― 欧州や他国のインダストリー4.0プロジェクトへの参加状況はいかがですか。

チュールケ氏 EU内の国でいうと、インダストリー4.0を推進しているのは、ドイツの他では、スイスとオーストリアくらいだ。他の国々は経済問題などで、これらの新たな取り組みをどうするかというのを考えられていないということも背景としてある。ただ、EUでは、研究開発枠組みプログラムである「Horizon 2020」の「Factories of the Future」という枠組みで助成金を受け、活動をスタートさせている。

 一方で、インダストリー4.0と同様の考え方で、次世代の生産技術を実現しようという動きは世界各国に広がっている。例えば米国ではオバマ政権が「製造業を国内に戻す」と宣言し、さまざまな政府プロジェクトを進行させている。また、「インダストリアル・インターネット」というコンソーシアムをインテル、AT&T、シスコシステムズ、GE、IBMなど米国ビッグ5で作って活動を進めている。中国でも政府が大きな予算を立てて、生産技術革新に向けたプロジェクトを進めている。日本や韓国が政府プロジェクトでどういうことをやろうというのは、まだ見えていない状況だ。

課題となる標準化

―― インダストリー4.0を実現するには、標準化が大きなカギを握ると思いますが、どのような取り組みを進めていますか。

チュールケ氏 標準化はインダストリー4.0における重要な課題で、中心的な役割を担っている。プラットフォームインダストリー4.0が中心となって標準化を進めている。標準化を進めるのは、関わる企業や国によって大きく異なるため、それぞれに合わせて進めているというのが現状だ。例えば、米国や韓国はトップの数社が標準化を進めるだろう。しかし、ドイツの製造業は大企業もあれば、中小企業もある。大企業であれば自社で標準化を進めるということも可能だが、中小企業については、それぞれの接続性を維持するためにどうすべきかということをよく考えていかなければならない。


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