スマートファクトリーを末端から支える「RFID活用」:産業用機器 基礎解説(2/2 ページ)
RFIDタグ技術の自動車製造ラインなどでの採用が進んでいる。ドイツのインダストリー4.0などが示す高度自立分散型「スマートファクトリー」の基幹技術の1つとしても注目される同技術。あらためて産業用途でのRFID技術を整理するとともに、製品動向を紹介する。
RFIDタグの基本を振り返る
RFIDタグはよくバーコードタグと比較されるが、バーコードと比較して以下の特徴を持っている。
- タグ表面が見えなくても読み込むことが可能。タグ表面の汚れが読み取り性能に影響しない
- タグへの書き込み(タグ情報の変更)が可能である
- 複数のタグを同時に読み込むことができる
- タグに記録できる情報量が多い(バーコードの数千倍)
キーとなる識別IDを符号化したバーコードは、それを中央側データベースで照会するシステムであるのに対し、RFIDタグはさまざまなユーザー固有の情報を現場のタグ上に記録し、更新することが可能だ。
RFIDタグの動作原理
RFIDタグは外部から電波を照射するリーダーと共に使われる。リーダーはアンテナを通じてタグに無線電波を照射する。RFIDタグは内部アンテナを通じて電波を受信し、その電磁波エネルギーもしくは内蔵の電源でRFIDチップを起動させ所定の動作を行う。
常にリーダーが通信のイニシアチブを取り、タグの照会および読み書きの命令を出し、タグはそれらの命令に応答しタグ内メモリの情報や各種ステータスフラグなどをリーダーに送る。
RFIDタグの種類
RFIDタグは使用する周波数帯域から分類することができ、LF(中波)、HF(短波)、UHF帯、2.4GHz(マイクロ波)の製品が主に市場に出回っている。主要な特性を以下の表に整理する。
HFタグは国内ではFeliCa規格・チップの普及で、入退出ICカードや電子マネーなど幅広く採用されている。UHF帯RFIDタグは近年の電波法改正による高出力利用の規制緩和、920MHz電波帯への移行などに後押しされ急速に市場が拡大している。特に、UHF帯は読み取り距離が長く、これまでLF、HFタグなどで解決できなかった用途への利用が期待されている。
UHF帯RFIDタグ製品と用途
次に、用途が拡大するUHF帯RFIDタグについてさらに詳しく説明していく。産業用途に特化したRFIDタグ製品はカスタム開発品がほとんどだったが、最近では汎用性のあるRFIDタグが登場してきた。屋外、高温、振動・衝撃などの過酷環境を想定して開発された製品や、ATEX欧州防爆規格(欧州の必須防爆規格)を取得した製品もあるといい、バリエーションの拡大が進んでいる。以下に、特徴的なUHF帯RFIDタグ製品と用途について紹介する。
コンクリート埋設仕様タグ
移動体の位置制御や橋梁などのメンテナンス管理用途では、RFIDタグをコンクリートに埋設する必要があり、専用のタグが必要になる。コンクリート埋設を前提としたタグでは、埋設深さ5cmで約2mの読み取り距離を実現する。
高速移動体用タグ
鉄道車両識別用途などでは、高速移動中のタグを読み取る必要があるが、移動するタグが通過するわずかな時間に読み取り処理を完了させる必要があり、技術的難易度は高い。特定軸方向に幅広い読み取りレンジを確保できる外部アンテナ付きタグなどが開発されており、約1mの距離から最大200km/時で走行する自動車上のタグを読み取ることができるという。
センサータグの開発
最後にセンサーをRFIDタグと統合したセンサータグ製品について紹介する。センサーの無線化はさまざまな取り組みがあるが、外部電源、高度な通信インタフェースを必要とするものが多く実用化が進んでいない現状だ。ハーティングセンサータグでは、RFIDタグメモリに各種センサー情報を直接取り込むことにより、センサー情報を簡単にRFIDリーダーで読み取ることを実現している。電源不要のUHF帯センサータグはハーティングが初めて製品化した技術で、現在センサーメーカーと共同開発を進めており、温度、圧力、加速度などさまざまなセンサーに対応する製品を開発予定である。
本稿では、産業用途および製造現場におけるRFIDの活用とUHF帯RFIDタグの製品動向について紹介した。工場や製造現場を高度化するには、製造の末端情報をよりリアルタイムに近い形で把握し、コントロールしていく必要がある。IoT(モノのインターネット)などが注目を集めているが、より現実的にデータを取得する手法としてRFIDの活用場所はまだまだ広がると見られている。本稿が、製造現場へのRFID技術導入をご検討の読者の一助になれば、と考えている。
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