スマートファクトリーを末端から支える「RFID活用」:産業用機器 基礎解説(1/2 ページ)
RFIDタグ技術の自動車製造ラインなどでの採用が進んでいる。ドイツのインダストリー4.0などが示す高度自立分散型「スマートファクトリー」の基幹技術の1つとしても注目される同技術。あらためて産業用途でのRFID技術を整理するとともに、製品動向を紹介する。
「RFID(Radio Frequency Identification)」というとどういう技術を思い浮かべるだろうか。多くの方は電子マネーや鉄道系ICカードなどを思い浮かべるのではないだろうか。RFIDとは、広い意味で捉えると「ID情報を埋め込んだRFタグから無線通信によって情報をやりとりするもの」を指す。RFIDタグ技術は、既に電子マネーや物流関係などで幅広く利用されている。
これらの技術を、あらためて製造現場で活用しようという動きが高まってきている。既にUHF帯RFID技術の普及により、自動車製造ラインや鉄道車両などでの採用が進行。一方で、ドイツでは、「インダストリー4.0」プロジェクトで掲げる高度自立分散型「スマートファクトリー」を実現する基幹技術の1つとして、プロジェクトが進行中で、関連コンポーネントの開発が進んでいるという(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。そこで本稿では、あらためて製造業用途でのRFIDの価値や製品動向を解説する。
インダストリー4.0と産業用途におけるRFID技術の利用
ドイツが国策として取り組む次世代モノづくりプロジェクト「インダストリー4.0」。同プロジェクトの特徴は、“第4の産業革命”をキーワードに高度に自立分散化された製造設備・工程による飛躍的な生産性向上を目指した点だ。筆者が所属するドイツのハーティングも、この取り組みを支援する主幹企業の1社として、関連コンポーネントの開発を進めている。
インダストリー4.0の描く世界を実現するには、基幹システムなどの上流の情報から、製造機器のセンサーデータなどの下流の情報まで一元的に管理することが必要だとされているが、その流れの中で注目を集める技術が、RFIDタグだ。同技術により、インダストリー4.0が定義するスマートファクトリーの最小構成単位である「部品」「半完成品パレット」「センサー」「末端生産セル」「治具・工具」などが、必要な情報を自前で保持し、上位システムとシームレスに共有するために不可欠なコンポーネントになり得るからだ。
RFID技術を利用することにより、これまでバーコードやかんばんなどの指示書経由で中央一括管理・運用されていた以下のような情報を現場側で自律運用することが容易になる。
- 部品・半完成品に関する生産指示情報
- 生産設備に関する行程変更指示情報、メンテナンス情報
- センサーで感知されたリアルタイムセンシング値
これらにより、インダストリー4.0が目指す高度自立分散型生産方式の実現に近づけることが可能となる。
代表的RFIDタグの活用分野
産業用途におけるRFID技術・製品の適用は既に始まっており、以下のような用途が代表的な利用方法である。
- 複数の対象物を一括で読み取るアプリケーション(一括読取アプリケーション)
- 移動体を無線技術で補足し、情報収集するアプリケーション(移動体アプリケーション)
- MRO(Maintenance, Repair and Overhaul/修理、保守、点検)情報を対象物自身に現場で保持させるアプリケーション(MROアプリケーション)
この中で製造現場での利用が進みつつあるのが、MROアプリケーションだ。金型や主要設備の保全・メンテナンスなどが該当する。ハーティングではMROアプリケーションとして、欧州大手航空会社向けに航空機主要部品管理システムなども提供しており、徐々に活用が広がっているといえる。
一方、一括読み取りアプリケーションは、段積みされたコンテナやトレイを迅速に読み取るようなケースで使われるケースが多い。主に物流業界ではバーコードに代わる技術として活用が進んでいる。移動体アプリケーションとしては、搬送コンベアー上のパレットや無人搬送車(AGV)の位置・制御情報の捕捉などに利用。近年では鉄道信号システムの一部として走行鉄道車両の位置特定用途にも採用されている。
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