製造現場になだれ込む「モノのインターネット」と「ビッグデータ」:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
IoT(モノのインターネット)やビッグデータ解析の活用先としてにわかに「製造現場」への注目度が高まっている。製造業において、ICTの活用により生産性や柔軟性をもう一段高めようとするモノづくり革新の動きが活発化する一方で、これらの技術のビジネス活用を推進したいIT系企業が提案が加速。製造現場への熱気が高まっている。
製造現場全体が1つのロボットになる!?
なぜ、急速にIoTやビッグデータ分析などの技術を製造現場で活用する動きが加速しているのだろうか。それには大きく2つの要素があると見られている。
1つはICTの進歩だ。IoTやビッグデータ分析などには、基礎となるコンピューティングパワーの他、高度なセンサー技術やネットワーク技術、データの処理技術などが必要になる。しかし、これらの設備をそろえるには、従来1企業が投資するのに大きなリスクを伴うような金額規模が必要となり、容易には扱えないものだった。現在ではこれらの技術がより使いやすくなり、またコストも大幅に低減してきたことで、より多くの企業で簡単に扱えるようになってきた。多くの製造現場で導入を検討できる領域に入ってきたということになるだろう。
もう1つの要因は、製造現場でさらに高度な自動化を進めるという動きが活発化していることだ。従来製造現場ではICTは活用されていても個別で使われるケースがほとんどで全体を統合するような動きはそれほど進んでいなかった。しかし、ICTの能力を製造現場に取り込むことで抜本的に製造の生産性や付加価値を向上しようという動きが進みつつある。
例えば、ドイツでは現在、ドイツ政府が主導する「インダストリー4.0」プロジェクトが注目を集めている(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。
インダストリー4.0が目指す姿は「設計や開発、生産に関連するあらゆるデータをセンシングなどを通して蓄積しそれを分析することで、自律的に動作するようなインテリジェントな生産システム」だとされている。製造現場のあらゆる情報をセンシングし、それをリアルタイムで分析可能となることで、製造機械や製造ラインそのものが自律的に生産調整や部材発注などを行い、抜本的な自動化と効率化を実現するというのが理想の姿だ。
富士通の川妻氏は「今後は製造ライン全体が1つの自律的なロボットとして自動稼働するような世界に進むと見ている。その際に各種生産設備や、それに取り付けられたセンサーから得られるデータをリアルタイムで集めて、分析し処理するようなことが必要になる。モノづくり分野でのデータ活用は大きく進むだろう」と述べる。これらを実現するための手段として、ようやく製造現場でIoTやビッグデータ解析が取り込まれ始めてきたというわけだ。
バズワードからビジネストレンドへ
IoTやビッグデータはここ数年ICT業界のバズワード(流行のキーワード)となっていたが、実際のビジネスでは効果が見えづらく、なかなか活用が進まない状況が続いてきた。しかし、製造現場においては、ようやくビジネスメリットが見える段階に進み始めてきたといえる。
例えば、製造装置は長時間稼働させ続けるものも多いが、製造中に故障が発生すれば、生産計画の変更なども含め計画外コストが発生する。しかし、製造装置の稼働状況や履歴などのデータを取得し、故障時期を高い精度で予測することができれば、保守やメンテナンスを計画通りに行うことが可能になる。計画外費用やメンテナンスコストをなどを大幅に低減できるということだ。そのためTCO(総所有コスト)を計算すれば、導入に掛かるコストと回収に掛かる期間が明らかになり、導入を検討しやすくなっている。
バズワードからいよいよビジネスへ。製造現場を舞台に導入加速への期待が高まっている。
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