ソニー、果てしなく続く構造改革と事業縮退――テレビ部門は累積7900億円の損失:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ソニーは2013年度の連結決算を発表。2013年度は1284億円の最終赤字となった他、2014年度も500億円の最終赤字を予想する。さらに2014年度までの経営目標「売上高8兆5000億円、営業利益率5%以上」も未達となることが明らかになった。
エレクトロニクスは10年間で売り上げ半減
ソニーでは「ソニーショック」と呼ばれた2003年3月期(2002年度)の決算以降、断続的に業績不振に陥り、その度に構造改革を行ってきた。しかし、その根源でもあるエレクトロニクス部門の抜本的な経営再建はなされない状況が続いていた。ゲームやモバイルを抜いたエレクトロニクス主要部門の売上高はピークの2007年度が5.9兆円だったのに対し、2013年度は3.2兆円となり、ほぼ半減した。また過去10年間のテレビ部門は累計で7900億円の赤字となっているという。吉田氏は「この責任は非常に重いと痛感している。構造改革が十分でないまま先送りしてきた」と述べる。
これらに対し、「事業を変える」「コスト構造を変える」の2点を中心に構造改革に取り組む。2013年度に行ったPC事業撤退などを含む事業ポートフォリオの再編を進める一方、本社の構造改革、販売会社のコスト削減を行うという。これらの構造改革については、以前から取り組んでいたが、さらに踏み込んだ形で実施するという(関連記事:ソニー、PC事業を売却してもテレビ事業を分社化してもなお、見えない光)。
吉田氏は「エレクトニクスの売上高が減少する中、販売会社も従来の規模必要ない部分が出てきている。販売会社のコストは13年度で約2900億円だったが、これを15年度までに20%削減する。また本社コストは約1450億円だがこれも30%削減を目指す」と話している。
また、課題のエレクトロニクス事業については「資産価値の変動性が高すぎることが経営リスクとなってきた。これを抑え、安定した事業の形に変えていく必要がある」(吉田氏)とし、BtoBなどを含む安定した取引などを重視していく方針を示す。
吉田氏は「CMOSセンサーをはじめとしたデバイスはもちろん、モバイルなどもキャリア相手のビジネスはBtoBと言えなくもない。キャリアとのパートナーシップを強化することで変動性を抑える。またゲームなどもゲーム開発会社からのライセンス収入などを行うBtoBビジネスと考えれば、変動性が抑制できる。こういう領域を意識していく」と話す。
ソニーの“池”は厳しい競争ばかり
ソニーでは「構造改革は今回でやり切る」(吉田氏)と強調しているが、実際にそれが実現し成長する企業へと回復するかは、極めて不透明な状況だ。
「投資はまず重点3事業に集中する」(吉田氏)というモバイル、デジタルイメージング、ゲーム・ネットワークサービスだが、市場環境は厳しさを増している。PC事業苦戦の要因であるスマートフォン普及による影響を受け、デジタルイメージングではコンパクトデジタルカメラ、ビデオカメラなどの市場縮小が加速している。またゲーム機でも、2013年11月に海外で発売したPS4がまずまず順調な一方で、スマートフォンゲームの影響による家庭用ゲーム機の市場縮小が懸念されている。
またこれらの影響の基であるスマートフォンやタブレット市場も、成長の鈍化が見え始めた一方で、競争は激化しており、予断を許さない状況だ。実際にソニーでは目標だった年間4200万台の目標販売台数を下方修正し4000万台としていたが、最終的にはその数字にも届かず3910万台で着地している。
一方でBtoB製品へのシフトもなかなか難しい状況だ。ソニーではCMOSセンサーや、放送用カメラなど、圧倒的な強さを誇るBtoB商材などを保有しているが、構造改革の過程で事業終息なども進めてきたため、全体の成長をけん引できるほどの事業数がない。
ソニーでは今回新規事業への取り組みについて「投資の優先順位から考えて大きく投資するのは難しい。小さい投資で可能性を広げ、可能性が見えるようになり投資ができる体制が整えば大きく投資をしていく形だ」(吉田氏)と方向性を示す。しかし、BtoC製品の市場縮退の影響を受けBtoBシフトもままならない現状では、成長軌道への反転は新規事業の創出によって行う必要がある。
抑制した投資で新たな成長の芽をつかむことができるのか。ソニー復活への道筋はいまだに不透明なままだ。
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