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利益いろいろ、基本は“海老ただ”? =“EBITDA”って何?いまさら聞けない原価管理入門(1)(2/2 ページ)

グローバル化する製造業にとって「原価管理」の重要性は今まで以上に高まっています。しかし、原価管理をうまく運用するのに苦しむ企業も少なくありません。そこで本連載では「いまさら聞けない原価管理」として、原価管理の基礎を分かりやすく解説していきます。第1回は、経営指標として最も重要な「利益」について、説明します。

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 前ページの表1では掲載されていませんが、最近財務諸表に記載される機会が増えた「利益」をもう1つ紹介しておきます。

包括利益

 貸借対照表(企業が保有する資本をどう保有しているか示すもの。資産、負債、純資産などの状況を示す)における期首と期末の純資産の差額を表します。当期純利益に貸借対照表上の純資産の「評価・換算差額」を足したものになります。本来の事業活動のみではなく、為替変動や有価証券の評価額の変動幅が企業経営に与える影響が大きくなってきたために注目されるようになった利益です。

連結損益計算書に現れない「利益」指標

 ここまでは連結損益計算書に現れる「利益」について整理してみました。連結損益計算書に現れる利益は、主に企業全体の状態を表すのに向いたものが多いですが、よりオペレーション側に立った視点では次のような「利益」が重視されることがあります。

限界利益

 「売上原価」ならびに「販売費および一般管理費」の中には、売上高に応じて費用が増減する「変動費」と増減せずに一定である「固定費」があります。限界利益とはこの変動費を売上高から引いて算出した損益です。限界利益が固定費を上回っていなければその事業は赤字となります。変動費は、原材料費など、純粋に外部に支払う費用がほとんどとなりますが、限界利益のレベルをきちんと認識して事業活動を行うことは事業の継続性を判断する上で非常に重要です。限界利益と固定費の関係を見るとどれだけの売上高を得られれば利益が出るかという「損益分岐点」が導き出せます。この辺りの内容については、本連載シリーズの後半で解説する予定です。

EBITDA(イービットダー、イービットディーエー)

 EBITDAは「Earnings Before Interest、Tax、Depreciation and Amortization」の頭文字を取ったもので、営業利益+減価償却費で計算できます。減価償却とは、設備や建物などの長期間使用する有形固定資産において、取得費用を一度に計上するのではなく、使用期間(耐用期間)に応じて徐々に計上する仕組みのことです。額が大きな固定資産を購入期に全て計上した場合、企業業績がその期は大きな赤字になるなど、実際の企業活動の成果が見えにくくなるため、企業業績がより実態を伴って表現できる狙いで導入されています。「使用期間」と表現しましたが、減価償却の期間は個々の企業が勝手に自社の都合で決められるものでなく、業種や機械によって国税庁によって決められています。

 このEBITDAには大きく2つの活用法があります。1つは、グローバル展開をしている企業にとって、国によって異なる法人所得税制や減価償却制度の影響を少なくして事業収益力を評価することです。そのため国際買収などの場面ではこの数値を重視する傾向が強いといいます。2つ目は、減価償却費はキャッシュアウトを伴わない費用であるため、その分を足し戻すことにより簡易的にキャッシュフローと捉え、設備投資などの判断をすることです。


 今回はさまざまな形で表現されるさまざまな「利益」を紹介しました。次回以降はこれらの利益の役割を踏まえて、利益管理にとって最も影響度が高いといえる原価管理について紹介していきたいと思います。

(次回に続く)

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