利益いろいろ、基本は“海老ただ”? =“EBITDA”って何?:いまさら聞けない原価管理入門(1)(1/2 ページ)
グローバル化する製造業にとって「原価管理」の重要性は今まで以上に高まっています。しかし、原価管理をうまく運用するのに苦しむ企業も少なくありません。そこで本連載では「いまさら聞けない原価管理」として、原価管理の基礎を分かりやすく解説していきます。第1回は、経営指標として最も重要な「利益」について、説明します。
読者の皆さんは「利益」という言葉を聞くと、どういったモノを想像しますか。
もちろん、どのような話の流れで使われているかにもよるでしょうし、それぞれの立場にもよっても変わってきます。もし、投資家の方なら株式配当の原資となるべき「利益」をイメージされるかもしれません。一方、製造部門のエンジニアの方ならご自身が関わる製品が上げる「利益」をイメージされると思います。
このように「利益」という言葉には、見方によって変わるさまざまな意味が含まれています。そこで本稿では「利益」にはどのようなものがあって、それぞれどういう意味を持つものなのかについて整理してみます。
損益計算書の「利益」を見てみる
まずは、財務諸表における損益計算書上に記載されているさまざまな「利益」を見てみましょう。表1は某社の有価証券報告書に記載されている連結要約損益計算書です。ざっと「利益」という言葉が付いている部分を書き出してみましょう。この「利益」がどうやって導き出されているのか、またどういう意味を持つのかについて解説します。
売上総利益(= 売上高 − 売上原価)
売上高から原価(製品を作るのに必要な費用、材料費、労務費、設備費など)を引いたもので、「粗利益」とも呼びます。製品ベースで見た場合、製品そのものの収益力(どれだけ売値と掛かる費用の差があるか、どれだけ高く売れるか)を表しているといえます。売上原価には期首と期末の在庫の増減も必要経費として反映されます。例えば、材料の仕入高や製造コストに大きな変動がないのに、売上原価が大きく変動しているとすれば、在庫管理が影響しているということが読み取れます。
営業利益(= 売上総利益 − 販売管理費および一般管理費)
売上総利益から、販売管理費や一般管理費など、モノづくり関連以外に必要な経費を引いたものです。顧客と製品の売買を行う営業活動を含めた事業全体の収益力を表しているといえます。決算会見などでは「本業のもうけ」などといわれることがあります。
経常利益(= 営業利益 + 営業外収入 − 営業外費用)
営業利益から営業外の収支の影響を加えたものです。営業外収入や営業外費用は、受取利息や割引料、投資の配当など、企業の財務活動から生じる費用です。そのため経常利益は企業の総合的な収益力(財務能力)を表すといえます。ちなみに、経常利益は国際会計基準(IFRS)や米国会計基準にはない利益項目です。
特別利益
企業の通常活動以外の特別な要因で、一時的に発生した利益です。不動産の売却や有価証券の売却などにより発生します。
税金等調整前当期純利益(= 経常利益 + 特別利益 − 特別損失)
経常利益から先ほどの特別損益を足し引きした結果を指します。「税引き前利益」「税引き前当期利益」とも呼ばれ、事業期間中の経営活動の成果と見なすことができます。
少数株主損益調整前当期純利益(= 税金等調整前当期純利益−法人税など)
税金等調整前当期純利益から法人税などの税金を引いた利益です。現在日本の法人所得課税の実効税率は国税、地方税を合わせ35.64%となっており、国際的に見ても高い水準にあるといわれています。毎年他国に比べて多く徴収されているわけですから、国際競争上では不利になります。法人所得税の見直し論議が盛んに行われているのは、この点によります。
少数株主利益
100%出資子会社以外で親会社以外の株主を「少数株主」と呼びます。「少数株主利益」とは子会社の当期純利益のうち、親会社の出資に見合った持分以外の部分のことを言います。例えばある企業で、80%出資の子会社があった場合、残りの20%の株式を保有している株主が少数株主となります。この子会社における20%分の損益はこれらの少数株主のものとなるため、親会社からこれらの少数株主に損益を渡す必要が出てきます。
当期純利益(= 少数株主損益調整前当期純利益 − 少数株主利益)
前述した少数株主損益調整前当期純利益から少数株主利益を引いたものが最終的に企業の手元に残る利益となります。「最終利益」とも言われます。企業が次の期にも投資に回せる資産となり、貸借対照表の純資産の部に反映されることになります。
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